日時      2014921()23()

メンバー             大内英明、大内涼子

 

8年越しの計画をとうとう実行する時がきた。

屏風には岩登りを始めた時から早い段階で登りたいと思っていたが、色々な壁に阻まれ今回までチャンスがなかった。

前週に台風16号が発生し、計画倒れになるかと心配したが、天気運が絶好調だったのか、全行程3日間、気持ちのよい秋晴れの下、充実した内容の山行となった。

 

今回の計画では、横尾にベースをかまえ、雲稜ルートを登り屏風岩の頭まで行き、そこから耳、コル、パノラマコース経由で涸沢へ行き横尾へ戻るという行程にした。

 

9月21() 晴

仕事の都合で前夜出発を当日早朝出発に変更する。

横尾に12時半に到着。テントを張り、T4取付まで下見へ行った。第一の核心である、岩小舎跡近くでの沢の徒渉は、くるぶしくらいまでの深さで渡れるラインを狙った。

下見では往復、それぞれ2回水に入ったが、帰りに辺りが薄暗くなるまで検証に検証を重ね、一度入るだけで済むルートを考え出した。

 

9月22() 晴

3時半起き、450分テント出発。

考えに考えた徒渉のライン。このラインは当たりだったが、早朝なので、前日午後よりもさらに水が冷たい。歯を食いしばって渡った。

横尾から徒渉地点まで30分。沢を渡り足を拭いたり、身支度整える時間含んで、ここで10分必要。

顕著な沢が1ルンゼ。ここしかルンゼがないので迷いようがないと思う。

この押し出しから50m程上流にケルンがあるが、藪漕ぎになりそうなのでここからは入らず、徒渉後すぐ、押し出しを詰めた。T4取付まで1時間。

 

T4 1P目 大内 約35m、2P目 涼 約35m

P目以降、歩きになる。ところどころロープで簡単に確保しながらT4尾根てっぺんに上がる。

月曜ということもあって雲稜ルートは貸し切り状態だった。とは言え、屏風岩貸し切りとはいかず、隣の東稜ルートを登っているパーティが1組いた。

雲稜ルート

登攀開始 8時40分 

P目 大内

35m強延ばす

P目 りょ

ロープの流れが悪くなるので5m程上がって一旦切る。ロープをひっくり返して、扇岩テラスまで再度リード

P目 りょ

P目のトラバースがおっそろしいのでリードを代わってもらう。有名なアブミの掛け替えルート。30mほどで切ったが、3m程右上に終了点があったのでここまで延ばしてもよかった。

P目 大内

上下方向に狭くなる恐怖のトラバース。セカンドでもそこそこどう動こうか迷ったので私がリード行ってたらかなり時間がかっていたかも。

P目 りょ

トポ図と照らし合わせてもよく分からないので、40m分登る。時間が気になるってくる。

P目 大内

48m登る。コールが聞こえづらかったので時間のロスあり。このロス痛い。終了支点がなく、適当に草と細木をたばねてのビレイだった。見たくないので、ちらっと見ただけで次のリードの態勢に入った涼。

P目 りょ 

ゼロピンを取るところがない。あるにはあるが、藪の中。そこまで動く間に落ちそう。6P目の終了点の信頼度が低いので、落ちるわけにはいかないので普段より緊張。一手でいいからカチでもあったら気が楽だが。ランアウトするが、思い切ってでも落ち着いて進む。

左上に泥のルンゼが伸びている。ここでロープ25mのコール。上部に見えている立木まで、ロープ、足りるか?一か八かで進む。降雨が久しくなかったようで思ったより泥は湿っていないが、再びランアウト状態で、一度足が抜けそうになって焦った。ルンゼ横に現れたぼろぼろの岩の斜面を登る。ここでも不意に足が滑り焦る。登り切ると、見えていた立木の向こうが台地になっておりロープがかかった大木があった。ほっと安心。約47m1445分終了。

 

さて、ここからこの山行、第二のビッグイベント。屏風の頭までの道。

終了点にある大木の横を、踏み跡に沿って登り開始(1510)

細い尾根伝いにまっすぐ行き、ややトラバース気味に行くと、いつしか道は不明瞭になるが、上方向を目指して適当に上がる。

そこから尾根伝いに踏み跡があり進むが、森の中状態で風景が見えないので、上に向かってるという感覚だけでこれが正しい道、と信じて進む。

時々、右に左に道はうねるが、藪をどかすと道は続いているので前進。時々、冬はここはどうなるのか、とおそらくほぼ絶対に踏むことはないだろう景色を考えて歩く。

40分ほど行くとごろごろとした岩が重なっている場所に出る。右に踏み跡が続くが、ここは直登した。

おそらく、右方向の踏み跡が正しいのかも知れないが、迷ってる時間はないので、上に抜けれるだろうとこのごろごろの岩場を登った。

ここから約20分ほど行くと急に目の前が開けて屏風ノ頭に到着。終了点からここまで1時間(1608)。ロープを出す場はなし。一応ハーネスとヘルメットは装着しておいた。

ここでちょっと焦る勘違いがあったが、地図を見て解決し、屏風の耳へ向かう。

頭と耳の間、下りて登り返してきっちり1時間。踏み跡はしっかりしているので迷うことはない。

耳からパノラマコースに行く途中で、ちょっとまた道迷いになりかけ、以前から気になっていた、前に所属していた山岳会の遭難碑を見つける。

ここで地図を再度出し、確認して登山道に戻りコルへ到着。山地図上、20分。が、私達は40分程かかった。

コル(1710)から涸沢ヒュッテまでパノラマコースを通り1時間(1810)。ヒュッテから横尾まで2時間(2010)。ヒュッテからはヘッデン灯火歩行となった。

行動時間は約15時間半となった。

 

本谷橋を通過する際、ヘッドランプが見えたので、すわ、また、事故騒ぎか?と思ったが2人のクライマーだった。

聞けばこの日、滝谷ドーム中央稜を登り翌日の帰宅を考えてがんばって横尾まで下りる途中だという。全装備持っての下山からか、少々疲れた様子をされていたが私達が横尾に戻って15分後ぐらいに到着されていた。

 

9月23()

4時半起床、6時半横尾出発

祝日なのでバスに乗る人、温泉に入る人、とにかく人出が多そうなので、(気持ちの上では)全速力で歩く。

入山時に徳沢名物のソフトを食べたこともあり、また、早朝でまだ気温は低いので、徳沢では休まず明神まで飛ばす。ここでは休憩を入れ、上高地に8時50分に到着。

9時発のバスに乗れた。温泉はいつものように、平湯の森。10時開店の一番風呂に入り、平湯バスセンター内のレストランでランチをいただき帰阪した。

ちょっとした情報だが、バスセンターの駐車場は、センター内で買い物、食事、または温泉を利用する場合は、90分まで駐車料金無料だった。

なので、温泉からバス停留所まで車を動かせた。近いようでちょっと距離ありますもんね。

 

感想

雲稜ルート、ハイライトのアブミのピッチとトラバースルートは気持ち的に覚悟していたのでそんなに怖くなかったが、この後の後半3ピッチがどきどきした。

こちらも気を抜いていたわけではないが、やはりゼロピンが取れない、不安定な終了点でのビレイでリードを行くというのは緊張する。

懸垂下降で下りることもできたが、会長の「おいしいところだけは取るな。壁は抜けてなんぼやで〜。」という口上に乗っかり、時間がかかってもいいから頭まで抜けることにした。

行動時間が長く、また夜になってのテント戻りとなったが、大きなトラブルなどもなく120%充実したクライミングを楽しめた。

久しぶりに“This is the alpine!!“という山行となった。

 


雲稜ルート1P目 天気よく貸し切り状態 最高だ Macintosh HD:Users:RyokodeYamaya:Desktop:とりあえずの写真保存用:IMG_0392.jpg

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P目出だし

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屏風の頭へ向かう 踏み跡はしっかりしてるが藪が…

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ひたすら藪漕ぎ 手袋必携 松ヤニがあちこちにくっつく

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屏風の頭から涸沢を見る この方向から見るのはめったにないので

時間も気になるがしばし見とれる

(文・写真 大内りょ)