2015 春合宿(剱岳) 前半組 山行記録
日時 2015.4.29-5.2
メンバー :森田会長、松並、川平(敬称略)
山行計画(予定)
4/29
室堂〜剱沢BC
4/30
剣沢BC〜二俣〜仙人池〜池ノ平山〜小窓〜三の窓(ビバーク)
5/1
三の窓〜剱岳本峰〜前剱〜剱沢BC
5/2
剱沢BC〜室堂

4/28 pm21:30 JR
大阪駅BTに到着。既に会長は到着されており、ベンチに腰をかけていた。
かるく挨拶をして、分担のダンロップ6テンを受取る。松並さんも合流し、22:20にバスに乗り込む。

荷物のサイズは当然オーバーしていたが、係員さんに特に文句も言われず、そのまま上機嫌で乗車。ただ、前々日に引いた風邪で咳が止まらない事が気がかり。

4/29 7:00am
富山駅に到着 快晴!
北陸新幹線開通で沸くJR富山駅は綺麗に改装されて、会長曰く、昔と全然違うとのこと。
天気も良く、今日からの合宿におのずと浮き浮き気分になってきた。

富山〜立山〜美女平とほぼ順調に乗継ぎ室堂には10:30頃到着。

GW前半という事もあり、それ程観光客も多くはないが、中国人・韓国人の観光客が目立つ。
室堂のトイレで美味しいお水をたっぷり確保し、いざ出発!
ただ、4L近くも水を確保(ビールを確保しておけば良かった…)したのでザックが超重い。

ザックの重さを測ってみると、松並さん26.5kg、川平26kg。んっ?松並さんもなんでそんなに重いの?
雷鳥沢のキャンプ場を経て剱御前小舎で小休止。ボーダー、スキーヤーしかも欧米人の団体さんがやけに多い。

室堂でもそうだったが、外国人が多いとグローバル化()の波がこんな山奥まできているのだと感慨深い。
15:00
頃 剱沢BCに到着。
非常に疲れました。やっぱり、水なんて持ってくるんじゃ無かったと後悔の念。
しかも剱沢キャンプ場には我々以外には誰も居らず、剱沢小屋も閉店休業で埋まったまま。

当然期待していたビールも無し。ここで水よりビールだと気付くが、剱御前小舎まで登り返す気持ちにはなれない。
気をとりなおして、テント設営開始!会長自慢のスノーソーも大活躍。

綺麗な雪のサイコロができ、それを上手く重ねていって防風壁を作っていくが、結構な重労働で腰が痛い。

設営完了後、特にする事もないので、取り敢えずテント内で入山祝い。「乾杯〜!」持ってきたウイスキー角が適度に冷えてて上手い!
やはり労働後は格別ですな〜!
因みに本日の食担は松並さん。鶏肉の照り焼き風を真空パックにされて持ってきており、先ずは湯せんで戻しアツアツを酒の肴に。香料も効いていて非常に美味。
その後、メインは豚汁と五目御飯。
昆布で出汁までちゃんととる本格派。しかも、生うどんに生野菜がザクザク、豚肉にワインと日本酒。そりゃあ重いでしょ〜
お疲れ様でした
会長曰く、「山にいるほうがええもん食べとる」と言いながら、松並さん持参の日本酒とワインで上機嫌!
という事で1日目は無事終了したが、相変わらず自分は咳が止まらない

4/30 4:00
起床 5:30BC発 快晴!
先ずは剱沢雪渓の長い下りから長次郎の出会いを経由し二股へ。

まだまだ雪上歩行に慣れていない事もあり、会長についていくのに精一杯。すると途中から左足親指の付け根が靴擦れ発生。
痛い足をかばいつつ会長に必死に着いて行くとかなり息が上がり、咳もやばい状態になってきた。マジで呼吸が苦しい
二股まで降り一旦休憩した後、仙人新道()と思われる尾根を登って行くが、いきなりの藪漕ぎに難儀する。

特にピッケルが邪魔でしょうがない(この辺りは改善しなければと思う)
仙人峠()?の辺りで、小休止となるが会長から「ここからがスタート地点やぞ」と言われるが、もうこっちは呼吸も荒く且つ咳が止まらない。

肺も痛く感じ、もしかしたら肺炎か?と気弱になる。
会長からは「三ノ窓迄行けるかどうかを決めろ!」との事だったが、

行った事もない人間に決めろと言われてもと思いつつその場では答えず、一旦は小窓近くまで行ってそこで判断しようということになった。
結局、池の平山手前のキャンプ場付近にて、会長からはここで降りると決断される。やはり自分の状態が良くない。
会長、松並さん、ごめんなさい。と心の中で謝罪&反省
小窓雪渓を下っていると巨大な雪の塊が今にも上から落ちそうな状態を発見。

会長から「ここはいつ崩れるかわからんから飛ばすぞ。しっかり俺についてこい!」と激が飛ぶ。
一気に緊張が走り、もうしんどいなんて言っている暇なし。兎に角、死に物狂いでついていくしかない。
小走りで一気に安全地帯まで駆け下りるとホッと一息(実際は咳が止まりませんでしたが…)
その後二股まで下りるが、ここからBCまで登り返すのだが、既に気力も萎え、力もでない為、トボトボ歩きに。

快晴のお天気だが、自分に景色を楽しんでいる余裕はない。

ギラギラの陽射しの中、既に水も底を尽き、雪を口に含みながらなんとか凌ぐ。

ただ、あまりの暑さと疲労で、意識も朦朧としてくる。ふと見上げると会長が何やらテルモスを持って水場らしきところへ向かってるではないか。

流石の会長も水切れらしい。途中同じ様な水場がいくつもあり、松並さんと汲みに行こうかと相談していたが、

会長に無断で行くわけにもならないだろうという事でガマンしていたが、ある意味遠慮は要らんかったのか?とも思えた。
当然我々もたっぷり給水できて、なんとか気力は回復!
そんなこんなで何とか18:00過ぎにBCまで帰還。暑さの中、ほぼ12時間歩き続けなので、精魂尽き果て、もう動けない。

完全に抜け殻状態。会長が沸かしてくれた暖かいほうじ茶が身体にしみる。
不意に「森田さん〜」とテントの外から会長を呼ぶ声が
なんと元アルデの清家さん()がわざわざ森田さんに会いに来訪される。どうやら山スキーに来ているとのこと。
会長としばし近況について会話されるも自分は初対面なのと、疲れもあって、口数はいつも以上に少ない。
今夜の食担は自分で、早茹でペンネのトマト風とろけるチーズのせというお洒落なものを用意させて頂いだが、味も見た目もイマイチだった。コッチの腕も上げなければ
夕食後、会長から、明日はどこ行こう?と聞かれるが、よく分からず、会長にお任せとした。
コース的には、八ツ峰56のコルから取付き〜剱岳本峰〜BCに帰るという事になった。
風邪の悪化を防ぐ為、今日は禁酒にて20:00頃に就寝。何度か咳と寒さで目が覚めると、おもむろに松並さんが「会長ここはどうしたらいいんですか?」などと寝言を言っていた
明日の事でも夢を見ているんだろうなと感じつつ、自分も体力回復の為に少しでも寝なければと言い聞かせ目を閉じた。

5/1 3:00
起床、4:30出発! 快晴!
先ずは剱沢雪渓を長次郎の出合いまで下り、そこから長次郎谷を登り、熊の岩を目指す。相変わらず下りでは靴擦れが痛む。
熊の岩を右に進み56のコルに到着。

息が上がらない様に、多少ペースをセーブして登ってきたので、ほぼ息も上がらず筋肉疲労も無い。よし、今日はいける!と気合いを入れ、会長の指示でハーネス、ガチャをつける。反対側には5峰が垂直にそびえカッコいい!
会長リード、セカンド川平、フォロワー松並さんの順で登って行く。
1p
目はスラブ状の岩陵をアイゼンの効きを確かめながら一歩一歩慎重に登る。

ホールドはしっかりあるが、浮き石も多く、蓬莱峡との差を実感。会長からの浮き石アドバイス無けれ怖い怖い。
2p
目以降は腐りかけた雪に往生。特にトラーバスが怖かった。

高度感もハンパ無いが、足元の雪がガクッと落ちる度にアドレナリンは噴射し鼓動も速まる。

スノーリッジも怪しげで、いつ崩れるかとヒヤヒヤしながら通過。とても会長の様にスイスイと歩けない。
ただ、上からの眺めは最高にいい!
高度感は凄いし、見渡す限り360°パノラマの絶景だ。一時疲れを吹き飛ばしてくれる。
とは言うものの、あちこちで小雪崩を目撃し、ここもいつ崩れるか分からないと思いつつ、その恐怖とも闘いながら進んで行く。
しばらくすると、轟音と共に大きな雪崩を目撃。
思わず松並さんと顔を見合わせ、「うわぁ〜怖いっすね〜」と。
会長にも「さっきの大きかったですね?」と問うが、「うん、そうね」の一言だけ。以外と平然とされており、妙に流石だと感じ入った。
6.7
のコルまで降りた時には13:00を過ぎており、会長からまたもやここで撤退の指示。結局6峰を登っただけの結果となった。
体力的には問題無いが、やはり技術が無いのでもたつき、時間がかかり過ぎてしまった様だ。2日連続の撤退。この悔しさは忘れない様にする。
6.7
のコルには残置支点があり、そのまま懸垂で下降。その後は適当な支点無いため会長がスノーボラードを作る。

「おぉ〜、この前琵琶湖バレーで勉強したやつだ、こういう場面で使うのだな」と感心した。

途中小さなクレバスに会長が落ちそうになるがなんとかギリギリ耐える。自分は耐えながらも最後にズボッと落ちる。技術と体重?の差かとまたまたヘコむ。

なんとか脱出するが、落ちた衝撃でボラードにロープがかなり食い込んだらしく、松並さんが心配そう。

「これ大丈夫かな〜?」と質問を受けるが下からでは状態解らず、結局そのままで降りて頂くことに。松並さん、スミマセン…m(_ _)m
そんなこんなで、4ピッチ程下降を繰り返し、なんとかデブリを抜ける。長次郎谷を下っていくと、高さ2mを越える巨大な雪の塊が立っていた。
朝登った時には確かこんなものは無かった。となると、さっきのでかい雪崩で落ちてきたんだ〜。もしこんなものに巻き込まれたらと思うとゾッとする。
長次郎の出合いまで下りてきたところで16:00過ぎ。ここからBCまで登り返すと思うと憂鬱になる。

しかも、昨日の晴天とは打って変わり、何故か寒風吹きつける超寒い状態に変貌している。

既に12時間近く行動しており、さすがにキツイ。寒風が容赦なく体温を奪い、ブルブル震えながらもとにかく気合いで登り続ける。

人間追い込まれると、下山後何を食べようかとか、早く温泉に入りたいとか、現実逃避からかそんな事ばかり考えるんだなとしみじみ感じた。
18:00
BC到着し、先ずはほうじ茶を頂く。冷え切った身体に温かいものは最高にありがたい。

さすがの会長も寒い寒いとブルブル震え、

「俺、軽い低体温症になっとる。身体もシビレてる」、「若い頃はこのくらいでこんなことにはならなかったが、もう年だ!」とおっしゃるが、齢65でこの体力。

今でも十分普通の人では無いですよと言いたい。
今夜の食担は会長で、メニューはバター餅との事。フライパンでバターを溶かし、餅を入れて焼き、最後に醤油でこんがり焼き目をつければ出来上がり。

焦げたバター醤油が食欲をそそる。
お餅を3つも頂き、エネルギー補充完了!

少し元気が戻った所で会長が「明日は何処に行こうか?本峰まで行ってから帰るか?」と投げかけるも「明日は室堂に帰ります!」とついつい即答。

今思えば、本峰に登っておけば良かったかなと多少後悔の念もあるが、その時は室堂で温泉に入りビールを飲むことしかもう思い浮かばなかった。
しかも松並さんの雪目が相当酷い状態であり、結論からすればこれで良かったかな?
結局会長も本心では無かったご様子でしたし、ご自身の明日のご予定もずーっと思案されておられた。

5/2 4:30
起床 快晴!
昨日は寒くて殆ど寝れなかった。シュラフが水分を含み膨張しなくなっていたからだ。
取り敢えずコンロで暖をとりつつお湯を沸かし、冷えた身体にトマトのお洒落なスープで先ずは身体を温める。
長めの朝食をとり、帰る準備をし、アイゼンを付けたところで、会長から「アイゼンなんか外せ!そんなことだから雪上歩きが上達せんのだ!」と2人とも叱責を受ける。

朝はカチカチだから、逆に付けてないと怒られると思っていたが仕方ない。
急ぎアイゼンを外し、再度準備完了!
するとおもむろに会長から、「やっぱり俺、ここで雪洞掘ってもう一泊するわ〜」と意外な発言。
えっ〜??今ごろ心変りですか〜?と、ザックをおもむろにおろす会長。
どうやらみくりが池温泉で宿泊する事が、急に勿体無く思えたようだ。
又、「アイゼン付けても良いよ〜」とお許しが出たが、着けたり外したりと、もう面倒臭さく、2人とも結局外したままで帰ることとした。
最後に余った食材とおつまみを会長に渡し、御礼を言ってBCをあとにした。
ああ靴擦れが痛い
でもそれよりも松並さんの雪目が気になる。
聞くと、初日からサングラスが壊れ、使用不能になっていたそうだ。涙が止まらなくなっており、少ししか目が開けられない状態で可哀想というよりも危険な状態。

自分の靴擦れなど軽いもんだと思いつつ、剱御前小舎にて自分のサングラスを松並さんに渡し使って頂く事にした。
下りはさすがにアイゼン無しでは怖く、アイゼン装着。又、靴擦れも痛いので、訓練と称して、尻セードからの滑落停止を何度も繰り返し、技術力向上()に努める。
すると偶然、雷鳥沢キャンプ場の下辺りで後半組の5名と遭遇した。
しばし会長の事、山行の事など情報交換を行い彼等と別れた。
さて、これが最後の登りと再び気合いを入れ、室堂に向け出発。
相変わらず足取りは重いがあと少しと思えば頑張れる。(実は勘違いで一の越山荘が室堂と思い込み、まだまだあるなと落胆していたが…)
するとちょっと歩いた所で到着!
やったー!着いたー!
ザックをデポし、早速温泉の混み具合を聞くと今はかなり混んでいるとのこと。
目の前に自販機があり、思わずファンタグレープを購入。

200円だったが、そんなことは関係ない!プッシュ、ゴクゴクゴク〜、ぷっはぁ〜!超ウマイ!くぅ〜、うますぎる〜!と、一気に半分程飲み干す。
天気もいいので外で暫し日向ぼっこをしながらのんびり過ごす。20分ほど経過したところで、お待ちかねの温泉にGO
左足の靴擦れは既に血塗れになっており、熱いお湯に漬けると激痛が走る。

ただ 3日ぶりのお風呂は兎に角気持ち良かった。窓から見える山々の景色も天気がいいので、いつもの有馬温泉とは趣も全然違う。

風呂上がりに体重計に乗るとなんと6kg近くも落ちている。(その時はマジかと思ったが、GW明け後すぐにリバウンド。どんだけ食べたんだろう…)
その後、山荘の食堂にてお待ちかねのビールで、無事下山できた事を祝して乾杯!

昼食も富山名物ホタルイカの沖漬け定食を注文し、美味しく頂く。ああ、なんか観光に来たみたいと思わず錯覚すら覚える。
室堂ターミナルでのバス待ちもハンパ無い状態。TVカメラも来ており、流石GW真っ只中!

JR富山駅にて松並さんと別れ、自分はこの春開通の北陸新幹線にて帰京。

新幹線では、ホタルイカの干物(300)をアテに、角ハイボールで北陸に別れを告げた。

感想
今回、合宿初参加。終始お天気には恵まれた事と、大きなケガも無く、無事に下山出来た事は会長と松並さんに感謝したい。
今回多くの事を教わり、又経験も積めた事で非常に勉強となった。
課題を数え上げればきりが無いが、今後の山行と日々のトレーニングによって更なる技術向上に努め、スピードアップ化を図っていきたい。

又、体調管理と体力面でお二人には相当迷惑をかけたと猛省し、今後の山に臨む姿勢含め課題として記憶に残したい。
 
剱沢雪渓の登り
   八ツ峰 5

  6峰のリッジ

  角ハイボールとホタルイカのアテ


写真/松並 文章/川平