八ヶ岳・阿弥陀北稜&北西稜(2016/1/9-11

メンバー/中嶋、山口、小林

八ツの西面では難しい部類に入る阿弥陀北西稜。

元々は参加メンバーが多く、しかも私がリーダーだったので、無難なルートにしていたが、

直前になりバラバラとキャンセルが入り、結局、中嶋さんと私、そして新人の山口さんの3人になった。

山口さんは大学山岳部出身で経験もあるので、初日に阿弥陀北稜、2日目に阿弥陀北西稜を登る計画にした。

 

01日目:1/8(), 9()

1/8()22:00、レンタカーで新大阪を出発。

駒ヶ岳SAで仮眠。寒いのでエンジン掛けたまま寝るが、いくら温度調節を上げてもエアコンからは冷たい風しか出てこない。

しばらく我慢して寝るが、どうにも寒くてたまらない。

「壊れている」と訴えると、中嶋さんに「『AC』というボタンを押しているからだ」と怒られる。今の今まで、そんな仕組みは知らなかった…。

2時間ほど仮眠を取り、豚汁セットの朝食を食べ、美濃戸まで。美濃戸山荘で準備をしていると他の会の知り合いに続々会う。

山の世界は狭いといつも感じる瞬間だ。

明るくなり始めた6時過ぎ、出発。

今年は暖冬。いつもツルツルで怖い林道も、やはり全く雪がない。と、普通の車が何台も追い越していく。

確かにこの状態なら、うちのマーチでも奥まで入れたな、と悔しく思うが、万が一、途中で雪が降って出られなくなったら大変だから、と自分を納得させる。奥の美濃戸口の駐車場は、これまで見たことがないくらい車がいっぱい。

フツーの軽もいっぱい泊まっていて、悔しさがまたもや込み上げてくるが、奥の駐車場は料金が倍だから、と再度自分を納得させる。

南沢の山道に入っても、相変わらず雪がない。1月でこんなに雪がないのは初めてだ。

でも雪がなさ過ぎて、ナメ滝状に凍った川が露出している。これを滑らないで歩けるわけない。

スケート状態で、何か所かある「ナメ滝」を通過。阿弥陀北西稜は全員初めてなので、取り付きが分からない。

事前の調べでは、行者小屋手前の平坦な山道を右に入っていくはずなので、今日のうちに確認しておく。

何か所かぽい道があったが、その付近は樹林帯なので、北西稜が見えず、どの尾根に取り付くべきなのかはっきりしない。

結局、最初に見た道が、「涸沢を越して、急な斜面を登る」という情報に近く、トレースも続いていそうだったので、明日はこのトレースを辿ることにする。

10時過ぎに行者小屋に到着。

思ったよりテントは少なく、まだ10張も無かった。ここでも雪が少なく、整地の必要がないほどだった。

テントを張り、登攀準備を整えて、11時過ぎ、阿弥陀北稜に出発。赤岳方面にしばらく行くと、文三郎道と中岳・阿弥陀方面に分かれる標識がある。

これを右の阿弥陀方面へ。一般道かと思うくらいトレースがばっちりなので、何も考えずサクサク進む。

下山に使う中岳沢の下部で右の尾根に上がるが、北稜はこれではない。

トレースを辿って、トラバースして、ひとつ隣の尾根に上がる。これが北西稜。尾根を登っていくとジャンクションピーク。

厳冬期の八ツとは思えないほど、風もなくほぼ快晴。しばらく景色を楽しむ。ジャンクションピークから徐々に急になる。

前の中高年3人パーティが、「ロープ出すか?」と相談しているので、先に行かせてもらった。

取り付きに着くと、1パーティが登ろうとしているところだった。こんなときに限って、用を足したくなる。

先日、谷口けいさんが「用を足す」と言って滑落死したことを思い出し、

前のパーティに「こっち見ないでください」と言って、岩の基部を右に少し巻き込んだところで用を足す。

出来ればもうちょっと視界が遮られるところに行きたいが、変に乙女心を出して死ぬくらいなら見られた方がまだマシだ、と開き直る。

さて、気を取り直して1P目。岩の左側を登る。前の女性パーティのセカンドは、なぜかバイルでぎこちなく登っている。

こんなに岩が露出しているなら、手で登ったほうが簡単なのにな、と思ったら、やっぱり落ちた…。

ドラツーの練習なのか、落ちてもやはりバイルにこだわる。

何とこさ登って行ったところで、私も出発。最初の岩を登って一段上がると、今度は右よりの雪面を登る。

前のパーティが木を支点にピッチを切っていた。

前の記憶ではいいビレイポイントがあったはずなので、そこは通り過ぎて、次の岩の基部まで行くと、ペツルの支点があったのでここで切る。

全員揃った時点で、ヌンチャクが一つ足りないことに気付く。

阿弥陀北稜は簡単なので、ロープ1本で、中間の中嶋さんにはプルージックで登ってもらった。

中嶋さんが自分が登るときランニングを外して、ロープを掛けなおさず、

さらにはヌンチャクも回収しなかったので、それにラストの山口さんが気付かず、ひとつ置いてきてしまったよう。

後ろの中高年パーティが回収してくれることに期待しましょう…。

2P目は、岩を登って雪面登って終了。前は雪面に埋め込まれていた残置を使ったが、今回は雪が少なく、ハイマツで支点を取った。

あとは少し歩けば阿弥陀頂上。あっさり終わった。後ろのパーティから残したヌンチャクを受け取るため、ここで待つことにする。

が、天気はいいとはいえ、さすがに頂上は風が吹いて寒い!!鼻水が止まらない!!

いよいよ我慢できなくなり、山口さんと私は夕飯の支度を口実に一足先に下る。帰りは中岳のコルから下山。15時に行者小屋に帰る。

 

 

休日は行者小屋が営業しているので、ビールを買い出しして、中嶋さんの帰りを待つ。

なかなか帰ってこないので心配し始めたころ戻ってきた。膝が痛くてまともに下れなかったそう。

私も持病の膝が痛むので、私が持ってきていた湿布を二人で貼る。

湿布に頼らずに居られないとは、最近つくづく年を感じる。若い山口さんがうらやましい…。

今回の夕飯の食担は二日とも山口さん。(私が金曜まで出張だったものですいません…。)

初日は味噌漬け豚肉を使った鍋。初めて作ったらしいが美味しかった。

ご飯も米から炊いてくれるところが、さすが大学山岳部だ。明日もあるので、少し焼酎を飲んで早々に寝る。

今日は4人用テントに3人だし、厳冬期用のシュラフだし、快適快適。

いつもは12時過ぎたくらいで目が覚めて、後は一時間おきに目が覚める…というのが普通だが、途中で一回目が覚めただけで、珍しくぐっすり眠れた。

 

2日目:1/10()

5時起床、6時半出発。昨日登ってきた道をしばらく下り、昨日確認したトレースを辿る。すぐに急な樹林帯の斜面に入る。

トップは中嶋さんが登ってくれたので、よく確認していないが、トレースはうっすらだったみたい。

樹林帯で視界がないので、本当にこれで合っているのか疑心暗鬼だったが、30分ほど登ると、正面に大きな露岩が見えた。

トポにあった「露岩を右に回り込む」という箇所だろう。これを超えると、急にトレースがバッチリになり、完全に安心できた。

ハイマツの中を登り、開けたところに出る。遠くに岩峰が見える。前のパーティがロープを出して、その岩峰に向けて登って行くのが見える。

ロープを出すべきか迷うが、変な場所で出したくないので、念のためここでロープを一本出す。

山口さんには中間をカラビナスルーで登ってもらった。2P登って、岩峰の基部へ。

この流れで岩の1P目は中嶋さんトップになった。ここでもう一本のロープを出す。

ダブルロープで私と中嶋さんがつるべ、山口さんはずっとセカンド、という形で登る。

 

 

1P目は岩峰を右に回り込んで雪面を登る。それほど難しくないはずだが、ロープがなかなか出ない。

天気は悪くないが、北面で日が当たらないし、風は強いし、寒さがしんどい…。待ち時間が余計長く感じる…。

途中、ソロの慣れた感じのお兄さんが、抜かしていった。ようやく登ってこいの合図。

いざ登ってみると、支点取りに苦労したようで、ちっちゃい岩のピナクルに掛けたり、ルートもジクザク。

苦労して取った支点もどれも甘くて、登る技術的には容易だが、落ちたら大けがは免れない。

中嶋さんの切なさが伝わってきた…。が、実際は3つほどハーケン見逃しており、それがますます切なかった…。

2P目、小林リード。そのまま雪面(と言ってもあんまり雪がないので、岩と草付きのミックス)を上がる。

ここはそこそこ支点もあるので問題ない。雪面を上がると、次の岩峰の下にビレイポイントがあったので、そこまで登る。

リッジ上を直登してきた後続パーティ(おそらくガイド)は、私のビレイポイントを超えて、そのまま左に進んでいった。

通常よく登られているのが左のルートで、その2P目が難しく、アブミを出してる報告が多かったので、私もアブミを持ってきた。

このままの順番だと、私が核心か…と思っていたら、リードの中嶋さんは右を登って行った。

右のクラックルートも難しいと聞いていたが、そもそもトポ通りに来ているのかも自信が無かったので、何も言わず中嶋さんの判断にお任せした。

やはり難しいらしく、ロープはするする伸びない。途中、「カム残置!」という声が聞こえた。

これまでこんなこと言われたことなかったけど、「使っているカムは残置だから回収しなくていい」という意味だと判断する。

が、これがその後、大事件に発展するのだった…。ルートは右に回り込んだところにあるクラックというかチムニー状を登っていく。

真ん中あたりが難しくて、A0してもなかなか上がれず、セルフ取って休んで何とこさ越えた。

「カム残置」と言われたので、あったカムは全て残置と思い、取ろうともしなかった。このピッチの後は簡単な岩と雪稜で終了。

しばらく歩いて頂上まで行くと、中嶋さんに「カム取ったか?」と聞かれる。

…なぬーっ!!??カムはすべて残置じゃなかったの〜???実はひとつは中嶋さんのだったらしい…。

高価なカムを残置してしまうなんて、昨日のヌンチャク残置の比じゃない。ショックすぎる…。

でも、それならば「カム残置」だなんて言ってくれなければ良かったのに…。せっかくのクライミングも台無し。険悪なムードで下山する…。

いつもカム見たらとりあえず回収しようとする。で、外れなければ、よくよく見て、見覚えのないカムだったら、残置と判断して置いてきてた。

なんで一応引っ張ってみなかったんだろう…。きちんと見れば、古い残置かそうでないかは分かるものなのに…。

初めて「カム残置」と言われたから、抜こうともしなかった…。核心ではA0しまくるし、散々だ…。

聞けば、実はそのカムには山口さんのロープが掛かっていたが、山口さんもよく分からないので、私のロープを掛けなおしたらしい。

ということで3人の連帯責任となり、後日、カム代は均等割りで負担した…。

今回の教訓、「カム見たら、何が何でも必ず引っ張る、無理なら残置」。

イライラモードではあるが、テントに帰ってビールで乾杯。山口さんのペミカンカレーを頂く。

ペミカンは初めてだったが、美味しかった。何よりすぐ出来るしコンパクトなのが素晴らしい。私も作ってみようかしら??

 

3日目:1/11()

6:40に行者小屋を出発。9:40に美濃戸着。

アイガーへ一緒に行ったべたこさんの車を見つけたので、霜の付いたフロントガラスにいたずら書きしておく。

美濃戸山荘の向かいには、きれいなペンションが出来ていた。食事をすれば、お風呂が350円になるらしい。

すでに営業していて、入ってみようかとも思うが、まあ車なのでいつものもみの湯に行き、ペチカで昼食。

夕方、大阪に無事着いた。(後日、そのペンションに寄った人の話では、美味しかったとのことなので、今度は行ってみたい。)

 

文章/小林