2016年夏合宿(源次郎T峰・成城大ルート)

メンバー/中嶋、小林

8/133:00起床。4:30、アイゼンを付けて熊の岩を出発。森田さんに見送られて、昨日登ってきた長次郎谷のボロボロの雪渓を下る。

スラブの岩に乗ったところでひとまずアイゼンを外す。

昨日、雪渓から乗り移った地点より下りすぎてしまったが、かろうじてつながっている部分を見つけたので、再びアイゼンを付けて雪渓に移る。

1時間ほどで長次郎谷を下り終わると、単独のお兄さんに出会う。「長次郎谷を登ろうと思ったが、雪渓が危なそう。新婚なので諦める」とのこと。

新婚かどうかは知ったことではないが…と、独身の私はひがみっぽく思う。

源次郎末端のザレ場と雪渓のキワを歩いて、5:50源次郎尾根の左側の末端に到着。

成城大ルートのある源次郎T峰上部岩壁へは源次郎尾根一般ルートから中央バンドに入っていく方法と下部岩壁から繋げる方法がある。

一般ルートからの取付きが非常に分かりにくいらしく、中嶋さんは以前、大内さんと迷いに迷って結局見つけられなかったらしい。

他の山友達からも分かりにくい、と聞いていたので、下部岩壁の中央ルンゼから繋げる計画だったのだが、昨日の偵察から平蔵谷の雪渓がボロボロすぎて下部岩壁へ取付けないと判断し、源次郎尾根一般ルートから入ることにする。

中央ルンゼから登るつもりだったので、ほとんど下調べしていないが、果たして見つけられるかどうか…。

「平蔵谷(前日撮影)」

 

源次郎尾根は5年前、アルデに入って初めての夏に連れて行ってもらった。

当時はロープ出してもらった最初のお助け紐の部分も、ここがその箇所と気付かぬほどあっけなくクリア。

当時はこんなとこでもモタモタしてたんだな…。途中、アディダスのサングラスを拾ってラッキー♪と思いながら進む。

森田会長の行動パターンが染みついてきたようである。(ちなみに会長は今年の合宿で環付ビナ、ハーケンを複数ゲットしたらしい。)

トポには源次郎尾根のルンゼルートから「尾根に出た地点から左に、中央バンドを目指し胸の付く急なハイマツ帯をトラバースし、沢状の中央バンドに入る」とある。

トラバース地点は小さなコルになっているらしい。とにかく左を気にしながら登っていく。

登り始めて2時間ほど、視界が開けてどん詰まりに岩があるところで左に続くトレースを見つけてそこを進んでいく。途中、踏み跡が消え、ハイマツで遮られる。

先頭を歩いていた中嶋さんは「違う気がする」とのこと。もう一か所も探るが、そちらも同様。

中嶋さんが休んでいる間に、私が荷物を置いて探しに行く。確かに中嶋さんが引き返してきたところはハイマツ地獄で足も切れてて、ハイマツに乗っかるしかない。

トポには「急なハイマツ帯」とあり、若干踏まれた感もあるので、無理やり進んでみると先に踏み跡らしいものが見えた。

そのまま数メートルハイマツを漕いで行くと踏み跡に出て、そこを進むと、写真で見た取付きまでの風景が広がり、中央ルンゼからと思われる綺麗な踏み跡とつながった。

「出たよ〜!」と叫んで、中嶋さんの元に戻る。道を忘れないうちに、と荷物を持って出発するが、早速、戻ってきた道が分からない…。

結局戻ってきた道とは違った気がするが、またもや強引に藪を漕いで9:20、トレースに出た。

「ルンゼから取付きに向かう」

 

ここで一休憩しルンゼを登っていく。取付き地点は「洞穴ハング」と中央の「大カンテ」が目印だが、「穴」は3つほどある。

「大カンテ」の位置から、右端の「穴」が洞穴ハングと判断。ルンゼから一段上がって洞穴ハングのあるテラスにたどり着くと、取付きのハーケンがあった。

15分ほど準備&休憩をして、10:301P目スタート。中嶋さんが奇数ピッチ、私が偶数ピッチをリードした。

 

1P目」

 

1P目、III級、30m、中嶋さんリード。カンテ左の凹角を登る。

2P目、III+、20m、小林リード。カンテから右を回り込み、テラスへ。3P目、IV級、20m、中嶋さんリード。カンテ左から安定したテラスへ。

 

3P目」

 

次が核心の4P目、IV級、A1(またはV+)、40m、小林リード。高度感のある長いピッチだ。かなり立ってて、細かそうなので緊張する。

トラバース→クラックを繰り返すので、登るラインをよく観察してからいざ離陸!

まずは凹角に沿って登るが、1ピン目がなかなか出てこなくてドキドキした。(後から聞くと見落としていたらしい。)

次はバンドを左にトラバースしてクラックへ。

チョークの付いたフレークで体を上げるところが難しくて、むむむ、となるが、そうだA1ルートだったんだ、と思い出し、ランニングにセルフを取って休憩。

ムーブを固めてから登った。一度A0したら、後は各駅停車…。ランニング取ってはセルフ取って休憩…を繰り返す。

A1ルートなので、支点は豊富。足りなくなりそうなので、ヌンチャクを間引きながら登った。(そのおかげで中嶋さんはA0用にヌンチャクを掛けなおす手間が増えたらしい…。)

ダイレクトルートの直上するボルトラダーを越え、ヌンチャクがそろそろ無くなりかけた頃、リスにハーケンが連打されているところに出た。

上のテラスっぽいところまで登る気になっていたが、ロープも40mほど伸ばしたようで、トポ上でもここがビレイポイントと判断し、ピッチを切った。

(他のピッチはビレイポイントに残置のシュリンゲがぶら下がっていたが、ここだけは何も無かった。)

登り自体にはあまりA0しなかったが、休憩し過ぎて、40分ほど掛かってしまった。

 

4P目」

 

4P目終了点より」

 

5P目、V級、40m、中嶋さんリード。V級とのことだが、難しいのは最初だけ。A0でこなせば何てことない。

一段上がって右に回り込む感じで草付きに入るが、途中から支点が無くなるので、中嶋さんは悩んでいた様子だった。

途中、かわいいフレークにシュリンゲでランニングを取っていて切なくなった…。

その後の2ピッチはIIIII級の草付きの中の岩場、とのことだが、支点が全く無いくせに微妙にやらしい部分もあるので、何だがスッキリしなかったが、14:30終了点に到着。

核心で時間掛け過ぎたかと反省していたが、岩に取付いてから4時間で抜けれたので、コースタイムの範囲内だ。暗くなる前に帰れるかな?

 

ここから源次郎尾根一般ルートと合流し、II峰へと登っていく。

15:40II峰懸垂地点に到着。ロープ2本で懸垂する。(ちなみに途中にボロイが支点はあるので、50m一本でも何とか降りれると思う。)

降りたったところで、「中嶋さーん!小林さーん!」と呼ぶ声がしたので、「だれですかーーー?」と返したが、すぐにテント場はガスで見えなくなった。池崎さんかな?

剱沢ベースならここから本峰を越えて別山尾根経由で戻るが、今日は熊の岩に帰るので、ここから長次郎谷側へ下る。

下るべき沢は昨日、森田さんに教えてもらった。通常なら雪渓が残っていて簡単に下れるらしいが、今年は雪渓が全くなくザレザレのルンゼだ。

懸垂で下降した地点からすぐのルンゼかな、と思ったが、ここだとテント場のかなり下に出そう。目の前のピークの向こう側のルンゼから下るとテント場の上に出そうだが、そんなに登り返すって言ってたかな?

ガスが出てきて、テントが見えなくなってきたので、無線で森田さんと交信。森田さんによると下降地点から10mほどのところから下るという。

そして、下りすぎずに、ルンゼから出たら左にトラバースするとこと。

結局、下降地点からすぐ真下でなく、森田さんの言うとおり、数10m行ったところの二つ目のルンゼを下ったが、悪い悪い!

池ノ谷ガリーの比でない。残置のぼろロープを発見したので、ルートとしては正しい模様。

ちょうどいい残置の支点があったので、最初一回懸垂した。以降はザレザレの岩雪崩・砂雪崩の中、何とか歩いて下った。

ガスでテントが見えなかったが、ルンゼを出たところで迎えに来てくれた森田さんが見えて、ホッとした。森田さんを目印に左にトラバース。

テントが見えると、川平さんと池崎さんが手を振ってくれた。待ってくれている人がいるって心強い。

17時前、のんびり下ってた中嶋さんも熊の岩に到着。3人が宴会場所と夕飯の準備をしてくれていて早速夕食。…暗くなる前に帰ってこられて良かった。

今日の分のビールも担いできて良かった。取付きを見つけられて良かった。天気も良くて良かった。ルートもカッコ良かった。人が居なくてルートを独占出来て良かった。

キレキレの雪渓にめげずに来て本当に良かった…。そして、森田さんはじめ、テントで待ってくれる仲間がいて良かった!!

たくさんの「良かった」と共に、池崎さんがビンごと担いできてくれた日本酒(〆張鶴)を幸せに味わいながら(一方で明日先に下る川平さんに「余るテント持て、ゴミも持て」と揉めながら)、

今日も熊の岩の夜は更けていくのでありました…。(結局、川平さんは4テンひとつ丸々担ぎ下ろしてくれました。が、ささやかな抵抗か、〆張鶴のビンは置いていきました…。)

 

メモ:カムは0.521セット持って行って、全部使った。最低限、0.51は持って行った方がいいでしょう。

0.4もあってもいいかも?ヌンチャクは二人で14本ほど持った。4P目はA1ルートなので、多めに必要。

取り付きまでは、途中「これ?まじで?」と思うハイマツ漕ぎがあるが、数メートルのことなのでめげずにいけば、踏み跡に出るはず。

ルート自体はもちろん、アプローチ、下山含めて、登りごたえのあるいいルートでした。

 

「源次郎I峰上部壁全容。登攀意欲をそそられます…。」

 

報告/小林