五竜・遠見尾根(2016/2/11-13

メンバー/中嶋、山口、小林

古い「岳人」の「冬ベストルート10」みたいな特集で載っていた五竜・遠見尾根。

思い起こせば2年前の3月に計画したが、直前に付近で遭難者が出て、南アの鋸岳に変更したのだった。

再度計画しようと調べてみると、「ラッセルしまくりたいなら遠見尾根!」「腰までのラッセル!」

「ラッセルに喘いで敗退!」などと、ほとんどがラッセルに苦しめられ敗退。

厳冬期に成功した記録はなかなか見つからなかった…。

ラッセル嫌いとしては憂鬱になるが、言い出してしまったものは仕方ない。

祝日と休暇を使って4連休に出来たので、とことんラッセル天国(地獄?)を満喫しようではないか!!

 

1日目:2/11()

いつもの新大阪のレンタカー屋を1022時に出発。一路、長野へ。

今回は長野北部まで行くので遠い。今回も中嶋さんと山口さんに運転頑張ってもらい、4時過ぎ、白馬五竜スキー場・エスカルプラザに到着。

始発のテレキャビンは8:15なので、1100円を払って仮眠室へ。場所は大浴場の前の大広間。

すでに20人くらいが寝ていた。暖かいし、まっすぐ横になれるのはありがたい。

6時過ぎになると、早くもスキー客が起き始めて騒がしくなってきたので、我々も起きて朝ごはん。

準備を整え、テレキャビンの列に並ぶ。早くも青空が広がり、天気の心配は無さそう!

テレキャビンからリフトを乗り継いで、遠見尾根の登山口に到着。早速トレースがない…。

9時、覚悟を決めて出発。するとすぐにテントを片付けているおじさんと遭遇。

下山かな?と思っていたら、「おー、援軍が来たー」と威勢よく声掛けられる。

聞くと、前日は天気が悪く昼過ぎまでテレキャビンが動かず、午後になってなんとか登山口まで来たものの、

一人でラッセルに苦しみ、昨日は尾根に上がるところまでトレース付けして終わったらしい。

「今日は頼みますよ!」なんて言われ、「じゃ、ありがたくトレース使わせてもらいます。また、あとで!」と言って別れる。

こちらも一人でもラッセル隊が増えるのは有難い。

早速、そのおじさんのトレースを辿るが、ほんの数10メートル、尾根にも上がらずトレースは消えていた…。

がっかりしたのも束の間、スノーシューの外人スノーボーダーが登ってくる。

スノーシューでも先に歩いてもらうのは有難いので、早速、追い抜いてもらう。

さらに若いわかんのお兄さんも登場。聞くと日帰りで、小遠見か中遠見まで行くとのこと。

荷物が軽いこともあるが、このお兄さんが、がんがん先頭を行ってくれる。

小遠見まで着くと、これから行く長ーい遠見尾根の全貌があらわになる。

小遠見、中遠見、大遠見、西遠見という小ピークをアップダウンし、最後に白岳の急斜面を登り、少し下ったところが五竜山荘。

そこから岩稜を登って五竜頂上に達する。

明日の行程を考えると、今日のうちに西遠見まで行きたい。近いように見えるが、期待は禁物…。

スノーボーダー軍団は小遠見で居なくなり、ここからは我々3人とお兄さんでラッセルすることになった。

お兄さんは中遠見までということなので、ならば、そこまでは楽させてもらおうと、すぐにトップを譲るずるい私…。

中遠見まではこの埼玉のお兄さんと山口さんがほとんどラッセルしてくれた。

11:45、中遠見着。ここでお兄さんとはお別れ。すると次はスキーヤー3人組が登場。

スキーではラッセルにならないが、全く無いよりかはまだマシ。

スキーの後を追っていると、「がぼっ!」と音がした!はっ、と思った瞬間、前方の尾根の雪庇の下が雪崩れていった。

スキーの跡はその崩れた雪庇の上に続いていた。スキーの跡を素直にたどっていたが、危ない危ない。

気を引き締めて、道を進める。3人だけのラッセルはきついが、天気は快晴!鹿島槍の北壁もすごい迫力!

まだまだ続く遠見尾根とその先にある五竜もきれいに見えて、山屋心が掻き立てられる。

にしても、朝出会った威勢のいいおじさんはどうしたんだろう??

これだけトレース付けてあれば、いいかげん追い付いてくれてもいいはず。

一人でも援軍が欲しいところだが、影も形も見えない…。

 

「中遠見から五竜」

 

「鹿島槍北壁」

 

大遠見でスキーヤーともお別れ。近いように見えた西遠見だが、なかなか縮まらない。

遠見尾根のボリュームが身に染みる…。それでも、それなりにいいペースでここまで来た。

暗くなるまでには着くだろう!最後のラッセルを頑張って、15時、ようやく西遠見に到着。

ピークから明日行くルートを確認。白岳までの斜面はかなり急に見える。

右側はシュルンドがいっぱい入っているし、左をトラバースすると雪崩れそう。微妙なラインを確認しておく。

テントは平らなピークの上に張ろうか迷ったが、やはり斜面のほうが整地は大変でも風はない。

ピーク手前の斜面にテントを張る。相変わらず穏やかな天気で、慌ててテントに入ろうとも思わない。

テントの中も温室状態。1本だけ持ってきたビールで乾杯する。

夕飯は私の火鍋。前半、煮込みが足りなくて薄味になってしまい申し訳なかった。

雪山恒例の水づくりに励み、8時頃就寝。整地が甘くて斜めだったので、今回はみんなで頭を高い側に揃えて寝た。

暖かくて、ぐっすり眠れた。

 

 

2日目:2/12()

4時起床。朝は私のパスタ。パスタのゆで汁を捨てようとしたら、2人から怒られる。

これまで捨てたこともあった気がしたが、あれは水のある八ツだったか…。

確かに貴重な水を勿体ないですね。失礼しました。

結局、私はゆで汁でカップスープを飲んだ。(最初からそうすりゃ良かったのだ…。全く、何年雪山やってるんだか…。)

5時半出発のつもりだったが、いっこうに明るくならない。

大阪でも5時半くらいにはうすら明るいから、と思ったが、今思えば6時半の間違いだったか??

結局、白み始めた6時まで待って出発。出来ればアイゼンだけで行きたかったが、早速埋まるので、アイゼンワカンにする。

と、ソロのおじさんが登場!!昨日の威勢いいおじさんか?と思ったら、違う人だった…。

誰でもいいから援軍は有難い、が、このおじさんはここで写真を撮って帰ると言う。今日こそ我々だけか。

 

「白岳に向かう」

 

「朝日に染まる鹿島槍」

 

白岳の登りは見たほど急ではなかったが、なるべく早く登り切ってしまいたいので、まめにトップを変えながらラッセルを急ぐ。

途中、真っ赤な朝日が上がり、急斜面を登る3人の影が雪の斜面に映って、かっこよかった。

 

「ラッセル頑張る3つの影」

 

斜面を登り切って、もう一個ピークを超えると五竜山荘。出発から2時間の8時に着いた。

振り返ると、我々のトレースがきれいに斜面に伸びている。うーん、満足満足。

と、遠くに2パーティ、計5名ほどが登ってきている。この距離感…。

おそらくもう我々には追い付かないし、全部トレースは使えるし、まるで図ってきたかのようだ。

でも、いいさー。ここまで来たら、自分たちだけで頂上まで行くのだー。

 

 

今日も快晴。風も強くない。山荘前で休んだ後、いよいよ頂上に向かう。

夏道がうっすら分かるので、それを進む。しばらくしてワカンを外した。若い山口さんがぐんぐん進む。

ひと登りしたところで、山口さんが「ルートがよく分からないのでお先に…」と言うので、私が先に行くことに。

リッジすぐ下をトラバースしていく感じで進み、頂上直下のコルに到着。

踏み跡がないところを歩くのは楽しかった!ちょうど風が遮られるので、ここで一休みして、最後の登りへ!!

 

 

ここでは中嶋さんが急斜面をがんがん登ってくれた。最後の美味しいところは山口さんに譲り、稜線に出ると…。

出たー!!剱だー!!いつ見てもかっこいい〜♪。いやいや、冬の剱は別格の迫力だ!冬の剱を見るなら後立がいちばん!

昨年春以来の再会に胸を躍らせながら、10時に五竜頂上に到着!

最初の登りではどれだけ掛かるかと思ったが、計画通り約4時間で頂上に来られた。

しばし景色を堪能するが、さすがに頂上は風が強いので、後ろ髪を惹かれながら、愛する剱に別れを告げる。

さ、ようなら、また逢う日まで…。

 

 

 

雪がちょうどよく締まっているのでサクサク下り、先程のコルで休憩。後続パーティはまるで見えない。

まさかあそこまで付いてきて、頂上に登らないわけないと思うが…。昨日のおじさんといい不思議なことがよく起こる…。

下りは先程のトラバース部分に気を付ければ、特に危ないところも無し。まずは山荘まで戻る。

さて、登ってしまえば後は下るのみ。今日の晩から崩れる予報だったので、なるべく早く下っておきたい。

西遠見から出来るだけ下にテントを担ぎ下ろすことにする。

下っていると、朝のトレースが雪庇の上に乗っていることに気付いた。うーむ、なかなか雪庇を見極めるのは難しい…。

12:45、テントに到着。1本道なのに、なぜか後続パーティとは会わなかった。みんな、いったい何処へ??

テントを撤収して、13:15、西遠見を出発。荷物が重くなるので、しんどいかと思ったが、ツボ足で下れたので大分ラク。

しばらくはサクサク下り、ひょっとしたら16:30の下りのテレキャビンに間に合っちゃうんじゃないの〜?

なんて調子に乗ったのも束の間、大遠見から中遠見までの下りと登りの踏み抜き地獄にすっかりやられ、そんな甘い考えは捨て去る…。

ここにきて連日のラッセルの疲れが出てきた。

20代の山口さんはぐんぐん進むが、アラフォー・アラフィフの私と中嶋さんは、全く追い付けない…。

大分遅れて15時、大遠見に到着。16時までは歩こうと決めていたが、小遠見までのアップダウンもしんどいな…。

覚悟を決めて、パンをむしゃむしゃ食べていると、山口さんが「ここにテントの跡があるんですよね…」と言うではないか!

確かにちょうど4テンが張れそうな整地された場所がある!

あと1時間歩いてそこで整地、ということのも面倒なので、ここで張ることに決定〜!!ルンルンでテントを張る。

今回も大分斜めっているが、整地されているのは有難い。

おそらく今日、後ろをついてきたパーティの跡かな?(下りの途中、大遠見にもひとつテントがあった。)

 

 

早速テントで、焼酎・ブランデーで乾杯。山口さん特製の鹿肉のジャーキーがなかなかの美味だった。

ペミカンキムチ鍋も美味しかったが、先程パンを食べまくってしまったため、白米はなかなか入らなかった。(ごめんなさい…。)

昨日の予報では夜から崩れることになっていたが、この日の猪熊さん予報では、明日の朝に延びていた。

(聞けば山口さんは晴れ男らしい。雨男で悪名高いM原君と一緒になったら、どっちが勝つだろう…。)

気温がかなり高いので雨が心配。冬フライには全く防水性無いですから…。夜のうちから雨にならないことを祈って就寝。

 

3日目:2/13()

4時起床。夜のうちは雪も雨も降らなかったよう。朝食を食べていると雪の音がし始めた。

テレキャビンの始発が8:15なので、6時過ぎに出ようと言っていたが、早く準備が出来てしまったので、5:40に出発する。

幸い小雪がちらつく程度。小遠見まで結構かかるかと思ったが、あっさり到着。

このままじゃ相当早く着いちゃうな…。なるべくゆっくり歩く。この辺りから、小雨に変わる。2月にここで雨とはかなり暖かい。

ちょうど遠見尾根の末端まで下ってくると、雲の中から美味しそうなオレンジ色の太陽が上がってきた。

私は朝日を見るたび、半熟ゆで卵の黄身がトローッとなっているところを想像するのだが、

ほかの二人に「何味?」と聞くと、中嶋さんは「オレンジ味」だって。

山口さんに至っては、「そんなこと想像したこともありません」だってさ。ちぇー、詰まんないのー。

ともわれ、なんだかんだ天気は大きく崩れず、山口さんはかなりの晴れ男だ。M原くんの雨男パワーにも勝てるかも?

この末端には手作りの雪のジャンプ台が作られていた。

ボーダーが作ったのか、かなり気合が入ってる。ここから尾根を下り、スキー場に入る。

登りはリフトが使えたが、下りは乗れないので歩いてテレキャビン駅まで下る。(そもそもまだリフトは動いてなかったが。)

結局7:15に駅に着いてしまった。駅の中で動くのを待つ。

スタッフの人が優しい人ばかりで、開店前のレストランのトイレを使わせてくれたり、始発より早く乗せてくれたりして助かった。

エスカルプラザまで下り、駐車場に行ってびっくり。

着いたときは一面雪で、駐車場のラインが見えていなかったので、他の車に揃えて停めたが、

この2日ですっかり雪が解け、ラインが現れてみると、うちの車はとんでもないところに停めていた。

なんと8台分くらいの場所を取っていて、迷惑極まりない…。

恥ずかしいので、逃げるようにして出発…。朝早くからやっている木崎湖の温泉施設でのびのび疲れをほぐし、大阪まで帰った。

 

感想:正直、頂上まで行けないと思っていたが、蓋を開けてみれば大成功の山行だった。

初日はラッセル頑張ってくれた埼玉のお兄さんに助けられた。

その後は、3人がそれぞれ頑張り、何より自分たちだけで頂上までトレースを付けられたことが贅沢だった。

やりたくても、結局誰か現れて、独り占めすることは難しいですから…。

つい手っ取り早い八ツの西面で満足してしまうが、ラッセルしてきわどいラインを登って、これぞ雪山の醍醐味!

他の会員(特に新人)にも是非行ってほしいルートのひとつです!

 

文章/小林