赤岳主稜

20161230

中嶋L・山口・近藤

 

300 起床。きららさんの雑炊を食べる。にんにくの漬物がおいしく、力が漲る気がした。

やはり本番前は今のうちに食べられるだけ食べておこうと食い意地を張ってしまう。残った雑炊は全て頂いた。

500 赤岳鉱泉BC出発 行者小屋を経て、赤岳主稜の取りつきまで歩く。

630 あたりが暗くて取りつき付近がよくわからない。100m程左にトラバースして目印のチョークストーンがあるみたいだが。

700 あたりが少し明るくなったがガスがかかっていて吹きつける風で体と指先が非常に寒い。空は曇り。

昨日の夜は寒さなど気にせずよく寝れたが夜明けは本当に寒かった。中嶋さんと小林さんが先行して100m程トラバースして取りつき確認後、こっちだと大きく声が鳴った。

 

730〜 今回は2パーティー 

@   中嶋さん・山口くん・近藤 A小林さん・きららさん

男女パーティーに分かれての登攀。先行は男パーティーから開始。

中嶋さんが「そしたら二人でつるべで登るか〜?」 

「・・・。」(無言)まさか自分が初めてリードをさせてもらえるとは思っていなかったので正直驚いた。 

楽しみ<不安 「登れるかな・・。」と思った。

山口くんはそこまで驚いていなかったので、リードで登るつもりだったのかな?なんて今になったら思えてきた。

ザイルを出して支度をするが、もたついてしまい焦りがでてしまう。

中嶋さんと山口君とは本番で始めてパーティーを組んだので、少々緊張したが急がなければと思うほど焦ってしまう。そういうときは冷静になれと自分によく言い聞かせる。オーバー手袋でのロープワークは日々の練習、慣れが必要である。

リードは奇数が山口君、偶数が自分で登攀開始。

 

1p目:チョークストーン上を越えていくが、少々苦戦。雪がなければ下をくぐれるとのこと。

ピッケルを上手く使ってバランスを取りながら足を上げていった。中嶋さんに「しっかりピッケルを雪面に打ちこめ」とアドバイスが。

アイゼントレでは、手を使って登る練習ばかりしていたのでピッケル・バイルを指してバランスを取る練習ができていなかった。

小林さん曰く、雪と氷が少なければガバを掴めるのだが、今回は全体的にあまりホールドがない状態だったとか。

始めの岩壁を乗り越えると雪渓歩き、再び右にまくように岩を登っていく。青と目立ったオレンジ色のザイルが左側に残置されていた。

 

2p目:ハーケン二つぐらいあったかなと記憶している。(曖昧)

ピナクルで支点をとりたかったが、雪が付いていてあまりとれなかった。

「ピッチは短く切っていこう」と中嶋さんに言われたので、ロープいっぱいになる前にビレイポイントを探してピッチを切った。

 

3p目:雪稜

 

4p目 :少しでも歩きやすいところを探しながら左側に巻いたが少しリッジ上になった岩場を登りきると左側が切れ落ちていた。

下を見下ろすとかなりドキッとし、心臓の鼓動が速くなる。「ここで左に落ちたら死ねるな」どこかでプロテクションを取ろうと岩角でとろうとしたが、やはり外れた。

プロテクションを取ることで、もたもたして体力を消耗するよりは早く抜けた方が安心だと判断し、先を急いだ。

ロープがあと少しというコールがあったのでビレイポイントを探すがなかなかいいビレイポイントが見つからない。

すこし面倒ではあったが大きな岩で120cmスリングと60cm 2本ぐらいつなげて支点を構築した。

 

5p目 :雪稜 

 

6p目:雪稜を40mほどランナウトし、最後の岩壁のビレイポイントへ。しっかりしたペツルがあったので安心できた。

ここから天気もよく太陽がでて気持ちがよかった。後ろを見ると文三郎から赤岳を目指す人達がたくさん見えていい眺めだった。

 

7p目: ここから核心の凹角を登っていくが出だしで少々詰まってしまう。もたついていると中島さんから「おい、なにしとんねん。はよいけ!!」と鬼軍曹ぶりを初体験。「怖いな・・。」

小林さんは「ピッケルを上手く使ってバランスとって」お二人の飴とムチを受け答えながら、必死に考えたが、もうてんやわんやだった。

「左足、立ち込めるかな・・?落ちたらやだな。でももたついたらだめだな。いってしまえ。。」中島さんに激を飛ばされ左足で立ちこむと意外にすんなり突破できた。

その後、階段状の岩を登りきるが、ヌンチャク回収にとまどり登攀に時間がかかってしまった。

中嶋さんに後ろから追いつかれるが余裕の表情。さすがベテランの方だなと思った。このピッチ、正直リードできるかなと感じた。

 

8p目:もう頂上は目の前で岩と雪稜を上がっていく。最後のビレイポイントで待機するが、風が強くて体が冷える。

 

1130頃 赤岳頂上

みんなと握手をかわし冬季初のアルパインルートを体験できた。

その後は文三郎を経て赤岳鉱泉BCへ戻った。途中、主稜取り付き部でトレースがあるか確認したが、僕ら以外に登攀した形跡はなく混雑もなかった。

行者小屋を越えて右手に横岳西壁に目をやりながら一番左奥の大同心雲稜が目に焼きついた。

「吉田さんと小林さん、あんな垂直な壁、挑戦したんだな。」かっこいいなぁと感じた。

赤岳主稜でひいひい言っているようじゃまだまだ先は長いだろうな。ただ、いつかは登攀してみたい。

 

ビバーグ訓練

1800300

とうとう長い訓練がやってきた。ヤングチームということで山口君とビバーグをした。ツエルトを立て、マットを敷いてシュラフカバーに足を突っ込みひたすら我慢した。

しかし、最初の小1時間は眠りにつけたが寒さで何度も起きる。二人で火を起こし、暖かい飲み物とひたすら行動食を食べた。

山口君の干し鹿肉を拝借しながら火を炊く。本当に暖かく、うとうとするが狭いツエルト内でバーナーを倒してしまえば、えらい事なので気を使いながら眠りについた。

手足が冷たくてしびれるが、寒くなっては火を炊き、再び眠るという繰り返しだった。

本番ではできればビバーグなどしたくない。そう思うとやはり山では何事も気がぬけないと改めて感じ、道具のありがたみが身にしみて感じた。

 

文章/写真 近藤

  写真1、下山時に撮影した主稜

  写真2、文三郎を下る