・錫杖岳1ルンゼ(2018年10月13日~15日)

メンバー:小林(L)、船戸(記)

当初は滝谷第4尾根を目指すも、天候に阻まれ敗退。代わりに錫杖岳でのクライミングを楽しんできました。

・10月13日 7:50あかんだな駐車場→8:40上高地BT出発→14:20涸沢着

・10月14日 4:40涸沢→6:45松濤岩→8:50涸沢→15:30上高地

・10月15日 4:40駐車場発→7:30取り付き広場→8:30 1ルンゼ取り付き(3P目)→

        12:00終了点→13:10取り付き→14:10取り付き広場→15:40下山

【詳細】

・10月13日(晴れ後曇り)

前日夜の内に、大阪を出発して一路高山へ。あかんだなの駐車場には2時前くらいに着いたが、すでに駐車場が空くのを待つ

車の列が出来ていた。自分たちは、入口横の空きスペースに車を入れ車中で仮眠を取る。まっ平らな草地だったので熟睡出来た。

7:50あかんだな発のバスで上高地へ。相変わらず日本人より海外からの観光客の方が多い、河童橋前を抜け涸沢を目指す。

途中、明神で入山祝いのぶどう酒を小林さんに奢って頂く。ご馳走さまでした。横尾までの長い林道歩きを経て、涸沢へ着く頃には

空はどんより薄曇りになっていた。テントを設営して、おでんを食べに行こうとすると、まさかの売り切れ・・・仕方ないので生ビールと

乾き物でまずは乾杯。明日の事を色々打ち合わせ、やはり天気が不安材料なので早めに出て上で様子を見る事にする。

晩飯は小林さんが、担ぎあげてくれた鰻でうな重を作る。2018年度の初鰻だったかもしれない・・・実に美味でした。

・10月14日(雨後曇り)

深夜2時、雨がテントを叩く音で目が覚める。何とか降らないで欲しかったがダメだったか・・・小林さんと相談し、ひとまず松濤岩までは

行ってみようという事になる。涸沢周辺では岩が乾いており、一瞬希望を抱くが松濤岩より滝谷側を覗いたところで考えが甘かった事を

教えられる。

【松濤岩・滝谷側】

岩にびっしり着いたエビの尻尾を見て、回れ右で下山を決める。雨が無ければ行けたと思うんですが・・・無念。

涸沢に帰還して、今後をどうするか相談。せっかくここまで来て、どこにも登攀せずに帰るのは悲しすぎる。

屏風岩基部など、色々な案が出るも最後は、移動が少なくて済む錫杖岳にしてみようとの結論に。

そうと決まれば、さくっと片づけて早々に撤退を開始。徳澤園で定番のソフトクリームを食べていると隣の席に

座った人が、プリンを食べているのが目についた。美味そうだ・・・小林さんと割り勘で追加注文。出てきたプリンは

程よい弾力で、上品なカラメルソースとも良く合っていた。ソフトクリームも良いけどプリンも是非一度ご賞味下さい。

下山後はひらゆの森で汗を流してから、閉店10分前のAコープに駆け込みお酒を調達。鍋平園地の駐車場に

テントを張って宿にする。(照明は付かないが)綺麗なトイレがあり、駐車場もガラガラ。実に居心地が良い環境に

にごり酒やらワインなどお酒が進む。夕食は船戸作成のカレーライス。ほのかな甘みの後に辛さが来る独特の味に

小林さんにもご満足頂けたようで良かった。

・10月15日(曇り後晴れ)

鍋平園地を4時前に出発、中尾高原口駐車場へ。準備を整えていざ出発。滝谷には行けなかったが、期せずして

クライマーのメッカ、錫杖岳に足を踏み入れる事になり意気旺盛。暗闇の中をひたすら錫杖沢分岐を目指して進む。

途中、クリヤ谷の渡渉で小林さんが片足を川に突っ込むトラブルもあったが何とか二俣出会に到着。だんだん大きくなる

錫杖岳に心が高まってくる。

【錫杖沢出合】

急登を乗り越え、7:30分に取り付き広場に到着。写真で良く見る左方カンテ前で準備を整え1カンテに向かう。

今回は帰阪の時間等も考慮し、バンドを巻いて3P目から取り付く予定としていたのだが、いまいち場所が分からない・・・

それらしき場所でザイルをつないで、バンドを横断してみるも余りの脆さに岩が剥がれまくる。トポではこんなルートでは

無かったはず・・・・・・ひとまず降りて奥の方に歩いて行くとしっかりした支点を発見。こちらが正解のルートでした。

◆1P目(トポ上では3P目) 船戸担当

凹角を登って、そのまま奥に進む。左上に新しいペツルの支点があったが、それに気づかずV字状岸壁の真下でピッチを切る。

トポでは、こちらが終了点として紹介されていて、ロープの流れを考えてもこちらを終了点にした方が個人的には良いと思う。

【1P目終了点より】

◆2P目 小林さん担当

P目終了点から、少しトラバースして左側のスラブへ。登れそうで、意外とホールドやスタンスが乏しい。小林さんは

スルスル登って行ったが、スラブが苦手な人は若干手こずる可能性も。

◆3P目 船戸担当

ある意味今回の核心部。トポではスラブ状フェースとあるが、取り付いてみると中間部は薄被りが続いて結構苦しい。

ホールド、スタンスも微妙なものが続くのに加え、上から流れてきている水で所々滑って気が抜けない。核心手前だと

油断していた。しかしそれにしても悪すぎる・・・ふぅふぅ言いながら、びちょ濡れのスラブをトラバースしたりしてどうにか

終了点に。上から水しぶきが垂れてきて、冷たいなぁと思いながらビレイする。小林さんも若干手こずっている様子だったが

程なくして、姿が見えてきた。

ここで小林さんから、衝撃の一言「そこ違うルートだよ」・・・!?!? な、なんだってー!!

なんと別ルートLittle wing(10b)に入ってしまっていたのだ。そりゃ悪い訳だよ・・・良く見れば自分の遥か下方に

綺麗な終了点があるじゃないか。自分のルートファインディング能力の未熟さを痛感する。幸いラッペル用の残置が残って

いたので、それを使いロワーダウンして貰い小林さんと合流。ご迷惑をお掛けしました。

◆4P目 小林さん担当

トポで核心と記載されていたピッチ。トラバースでカンテを超えて凹角に。さらにもう一度外に出てフェースを登る。

フェース部分はホールドも甘かったが、何より高度感が凄い。ここを一瞬の逡巡も見せずにサクッと超えた小林さんは

やっぱり凄い、と改めて尊敬。

【4P目 下はスッパリ切れ落ちてます】

◆5P目 船戸担当

ここで、時間はすでに撤退を予定していた11時。小林さんにどうしたいか聞かれたので、ここは我儘言って完登を

目指したい、と伝えると快くOKしてくれた。ただしスピードアップを指示されたので、グイグイ登って行く。スラブ部分は

スタンス豊富で登りやすく、素早く登る事が出来た

【5P目 登っている時の写真は無いので下降中の1枚】

◆6P目 小林さん担当

最後は簡単なチムニー。抜け口だけは窮屈ですが、上手く足を運べば抜け出せます。そのまま草付きを若干歩いて

終了点へ。

【終了点から1枚】

◆下降

あとは取り付きまで連続懸垂だ。支点もしっかりしているので、安心して懸垂出来た。

取り付きまで戻ってきて、これにて終了・・・と思いきや最後の最後でトラブルが。引けども引けどもザイルが動かない。

どこかの溝にでも挟まったか、まるで動く気配が無い為止む無く登り返してロープを外しに行く。戻ってきた小林さんから

ザイルを受け取り、再度引くと・・・あれ、動かない?これには二人とも思わず膝から崩れ落ちる。今度は自分が

登り返して、様子を見に行く。確かに絶妙な位置に溝があって挟まっている、これでは何度やってもまた挟まりそうだ。

仕方ないので、一度ザイルを抜き取り下の方に残っていたハーケンと残置スリングを下降点とする。

【いささか頼りないけど・・・】

こうして何とか下降に成功。2日連続となるひらゆの森で汗を流して帰阪へ。

今回、目標としていた滝谷での登攀が出来なかったのは残念でしたが、図らずして錫杖岳デビューが果たせた

事は僥倖でした。まだまだ登っていないルートがたくさんあるので、また行きたいと思っています。(勿論滝谷リベンジも)

自分にとっても非常に得るものの多い3日間となり、今後のアルデでの活動にどんどん活かして行かねばいけないなぁと

考えています。

最後に今回3日間、常に引っ張って頂いた小林さんに厚く多謝します。来年は是非とも滝谷リベンジに行きましょう!

文章/船戸