八ヶ岳権現東稜

期間 2019年3月22〜23日
メンバー 小林(L、記)、中嶋
カテゴリ アルパイン積雪期
ルート 権現東稜
行程 1日目:6:00新大阪→10:20清里→11:00美し森→14:55出合小屋
2日目:4:00起床、5:30出合小屋→6:00ゴルジュ→6:15稜上→8:30バットレス取付き→9:40稜線→10:40ツルネ→12:20〜13:00出合小屋→15:20美し森

詳細

2年前、尾根をひとつ間違えて敗退した権現東稜。八ヶ岳東面卒業ルートと言われてるので、改めて緊張してリベンジに向かった。

始発の新幹線ではるばる清里に向かう。朝から駅弁とビールで乾杯。久しぶりの電車で旅情感を満喫。以前は小淵沢でのあずさへの乗り換えが3分しか無かったが、3/16のダイヤ改正で18分になって余裕の乗り換え。さらにあずさは全席指定席の新型車両になっていて、鉄道ファンではないが若干テンション上がる。それにしても、あずさは本数も多いし、どうして東京からの便ばかり良くなるのか、所詮、大阪は地方都市なのである。

10:20に清里着。来るたび寂れる清里。タクシーも1台しかない。先に乗られてまったので、そのタクシーが帰ってくるのを待つ。清里駅から5分程度で美し森駐車場着。着替えをデポして、11時に出発。この日は暖かったので、中嶋さんは半袖だ。八ヶ岳東面もこれで3回目。毎回この時期だが、いつもは雪の林道も今年は全く雪無し。林道後半でようやく雪が出てきた。毎回、渡渉に苦しめられる印象だったが、今年は順調。小屋まで残り500mになって余裕ぶっこいていたところで、じゃじゃーん、いつもの渡渉が出てきたー。京都から来たという2人組が立ち往生していた。雪が多ければきちんと埋まってるのだが、今回は雪が中途半端で温度も高いので、ふいに乗っかると踏み抜いて川にドボン。水量も多い。どこかいい場所は無いかと探しに行ったら、踏み抜いて、膝までドボン…。なかなか抜けなくて、靴に水が入ってしまった。今回は雪が少ないのでここまでスパッツを付けていなかった。中嶋さんは手堅くスパッツを付けて、うまいこと渡っていった。置いてかれないように、京都の方が木を放り投げてくれたところに思い切って乗ったら、案外踏み抜かず、京都の方から歓声が上がる。彼らはここで帰ると言っていたが、中嶋さんが誘って、お二人も渡ってきた。私は先の様子を見に行ったら、早速次の渡渉…。これまた厳しい。京都の方はやはりここで敗退を決めて帰っていった。中途半端に渡渉させてしまい、申し訳なかった。

ここで後ろから来た3人組と渡渉を繰り返す。もう私は両足ビチョビチョなので、もうヤケクソ。最後の渡渉では太ももまで浸かった。一方、中嶋さんは無傷で小屋に到着。3時間もあれば余裕で着くかと思ったが、結局4時間近く掛かった。小屋で靴下を絞ったら、水がジャーっと出てきた。靴も内側は絞れるほどビチョビチョ。すっかり戦意喪失して、偵察は中嶋さんにお願いした。

一緒に渡ってきた3人組(若い男性二人+女性リーダー)も皆さん、濡れてしまったよう。小屋にある薪ストーブに点火してくれて、一緒に靴を乾かせてくれた。(ちなみに着火用の新聞と薪は小屋にある。有難いことです…。)どこから来たんですか?なんて、ご挨拶していると、なんと昨年GWの明神でお世話になった東京の山岳会の方たちだった。山の世界は本当に狭い。1時間半ほどで中嶋さんが戻ってきた。尾根に上がる目印になるゴルジュまで見に行ってきてくれたとのこと。踏み抜きが多くて大変だったらしい。明日は冷える予報なので、歩きやすくなることを祈るが、その分、濡れた靴が心配。布巾で水分を吸い取るのを繰り返す。薪ストーブの威力で靴からもうもう蒸気が出るが、乾くのは無理だろう。と言ってもどうにもならないので、ビールで乾杯し、夕ご飯。今回も乾燥野菜。乾燥すると小さくなるので、不安で余計に持ってきてしまい、今回も余ってしまった。今晩は結局2組だけ。男性陣は早々に寝てしまったが、東京の女性リーダーの方とストーブを囲んで、ちびりちびり飲んでいると、ちびりちびりどころか盛り上がってしまい、結局22時くらいまでは飲んでたかな?とても気さくな方で志も高く、勝手に意気投合させて頂きました。大阪にお越しの際は、お声がけください。

翌日は4時起床。靴自体はもちろん乾きはしなかったが湿ってるくらいになり、中敷きはすっかり乾いた。薪ストーブ様様だ。屋久島でビチョビチョになったときに試したビニール袋作戦を実行。替えの靴下の上にビニール袋を履き、靴からの水分を吸い取らないようにする。5時に出るはずが、水を汲みに行ったりして、5時半出。雪は締まっていてとても歩きやすい。踏み抜いた跡がいっぱいあるが、昨日の中嶋さんの跡らしい。ご苦労様でした…と思っているのに、後ろから「これ全部俺のだからな」と何度も言ってくる。だから感謝してますって。

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<▲目印のゴルジュ>

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<▲このルンゼを上がる>

目印となる顕著なゴルジュを過ぎてすぐ右のルンゼを上がる。これまた雪が締まっていて、15分で稜上に出た。

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<▲隣の旭岳東稜>

ここから木登り交じりの急な尾根登りが続くが、30分ほどで尾根が開けてきて、テントの跡が出てきた。大きさから言って4人組かな?荷物担いで登った人たちに敬服する。ここから30分くらいは優しい尾根登り。テント張れそうなポイントがいくつかある。(私はそんな辛いことはしたくないですが。)トレースもほんのり残っているのでスイスイ登っていく。

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2年前は右の尾根に居たけど、今回は正しい位置にバットレスが見える。最後はかなり急な草付き雪面を木やらハイマツを掴みつつ登っていき、尾根に上がってから2時間ちょっとでバットレスの基部に着いた。ノーロープでここまで来たが、最後の雪面はメンバーによってはロープ出した方がいい。

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<▲バットレス>

基部にある木で支点をとって、いざクライムオン!雪は全く無く岩は黒々している。トポによると、2Pとのこと。位置的に中嶋さんが1P目をリードする。左にトラバースしてすぐに見えなくなる。けっこう難しいと聞いたけど、ロープはスイスイ出ていく。さすがだな、と思うが、なかなかビレイ解除にならない。40mくらいだと思うけど?声も聞こえなくて、ロープ一杯まで登ってしまった。ロープを引っ張って合図し、私が登り始める。ランナウト気味との話だったがそうでもない。八ヶ岳特有のポコポコしたホールドがいっぱいあって、体感で言うとIII級+くらい?中嶋さんのビレイポイントまで行くと、あれ?岩はもう終わり…。一応、緩い岩場をリードで登るとすぐに雪稜に上がり、呆気なく終了してしまった。ロープ担いだというのに、美味しいところは中嶋さんに持ってかれて、結局リードらしいリードも出来なかった。唯一の岩の1Pも正直アイトレ程度の難易度。雪が付いていたらかなり難しいのだろうが、雪が全く無かったので拍子抜けだった。

そこからしばし細尾根を歩いて9:40に稜線に出た。八ヶ岳らしく風が強いので、早速下りに掛かる。嫌いな長ーい梯子を下りて赤岳方面に進む。途中振り返ると、旭岳東稜の五段ノ宮の上辺りに3人組が見えた。昨日の東京の方たちかな?

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1時間の稜線歩きでツルネに到着。ところどころ時間の記録の為、写真を撮っていた。ここで中嶋さんがやたら「記録はいいのか」と言ってくるので、別に要らんかったけど看板と一緒に撮ってあげた。

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<▲無理やり撮らされた写真>

後はツルネ東稜を下るだけ。ただ、これが結構迷いやすく、ついつい右に行きそうになる。左左を心がけるが、今回はトレースがある。一か所、トレースに惑わされて右に行ってしまって登り返した。とにかく左左に行くのがコツです。

12:20に出合小屋に戻る。あまりに早いので、この日のうちに下山することにする。残ったビールロング缶2本は、昨年、昨日とお世話になった東京の3人パーティの置き土産とさせて頂きました。

心配していた渡渉だが、雪が締まっていたので、難なくノーミスでクリア。私は岩でも滑らず、高さも出せるようアイゼンを履いて渡渉した。あとはダラダラ長い林道を歩いて、15:20に美し森到着。行きと同じタクシーを呼んで、天女の湯で暖まってから、のんびり電車で飲んだくれながら帰りました。色々不便はあるけど、飲みながら帰れるのは電車の魅力ですね。

メモ

文章:小林