2009年10月31日-11月3日 宮崎県・比叡山のマルチピッチ
メンバー/入道L、羽賀SL、今岡、清家


1 宮崎の岩場
 20年以上昔、「宮崎の岩場」(宮崎登攀倶楽部)という書籍が出版され、宮崎県の比叡山は、車を降りてからのアプローチが非常に近い(近いルートで徒歩1分)割に、穂高や劔などの岩場と見劣りしないスケールだと話題になっていた。20年来の念願である比叡山に行くことになった。
 今回のメンバーは、今年2月に入会し25年振りにクライミングを再開した私(入道)、羽賀(8月入会)、今岡、清家の4人組である。初心者4人組での比叡山、さて、どうなることやらと心配しつつ、10月30日(金)22:00発の博多行の夜行バスに乗り込む。

2 10月31日(土)晴
 朝7:30博多に着き、レンタカーを借り8:30に出発し、比叡山に12:00到着した。神社横にテントを設営し、いよいよ、第1日目のクライミングを開始する。
 初めての岩場であり、比叡山第T峰TAカンテルート(5PW+)に取り付く(13:30)。1ピッチ(30mW+)、2ピッチ(50mW−)は、TAカンテに出るまでのアプローチ的なものであるが、1ピッチ目が核心だったようだ。3ピッチ(45mW)、4ピッチ(30mW)、5ピッチ(30mW+)は、眺望、高度感に優れたスラブを登る。終了点には15:40到着。その後、懸垂で取り付きに下り登攀を終了する(16:10)。TAカンテルートは、初心者向けルートだけあって、ホールドは豊富にあり、非常に登りやすかった。
当日、岩場を整備していた地元山岳会の方から色々な情報を得て、比叡山を代表するルートの中で、私たちでも登攀可能と思われる「第1スラブスーパー」「ニードル左岸稜」ちょっと欲張って「ナックルスラブルート・スーパー」を登ることにした。

3 11月1日(日)雨
 朝5時頃から雨が降り出し、クライミングは中止とした。たまたま、地元・下鹿川地区で開催していた農産祭を見学する。農産物販売、カラオケ大会や抽選会等で、地元の方で賑わっていた。私たちは、猪の焼き肉(300円)、シシ汁(200円)、ぜんざい(200円)、そばがき(100円)などを食べ、地元の方としばしの歓談をする。その後、鉾岳へのアプローチを確認した後、高千穂温泉に行き本日の行動を終了した。

4 11月2日(月)曇(強風注意報)
(1)第1スラブスーパー(7PX+)
 西高東低の冬型の気圧配置が強まり、全国的に木枯らし1号が吹き荒れたこの日、宮崎県も強風注意報が発令されていた。強風の中、午前中は、比叡山第T峰第1スラブスーパーに取り付き(7:30)、Aピークに10:30到達。下降路をたどり神社横のテント場に戻った(11:45)。第1スラブスーパーは、2ピッチ(50mW+)の細かいホールド、4ピッチ(35mW+)の亀の甲スラブへの乗り越しと亀の甲スラブ、6ピッチ(40mX+)の核心が面白く、充実したクライミングであった。トポでは8ピッチであるが、実際は、トポでの5ピッチ目・6ピッチ目が合体(50m)していて、全体で7ピッチとなっていた。
(2)ナックルスラブルート・スーパー(ノーマル)
 テントで小休止後も強風であったが、ナックルスラブルート・スーパーに取り付く(13:00)。1ピッチ目(40mY)から、いきなりの核心で手強かったが何とか突破し、2ピッチ目(25mX−)はスラブの細かいホールドを拾う快適なピッチであった。その後、ノーマルルートに移動し、3ピッチ目(40mW+)を登る。途中であったが強風のため登攀を中止(14:30)し、懸垂で取り付きに戻り終了した(15:00)。その後、車で日之影温泉に行き体を温めた。

5 11月3日(火)晴(強風)
 昨日に引き続き、西高東低の冬型の気圧配置である。天気は晴れているものの、強風・低温で、コンディションは悪いが、最終日でもあり、花崗岩の弱点であるクラック(カムが有効に使える)を追って登る比叡山第T峰正面壁ニードル左岩稜(3P、10.9)に取り付く(8:00)。1ピッチ目の出だし、大きなクラックに手・足を突っ込むが、手がかじかんで、うまく登れない。仕方ないので、少し巻いてクラックに取り付き1ピッチを終了。2ピッチ目は左側のクラックにカムを2本ぶち込み、さらに残置ナッツ、ボルトにランニングビレイを取り、核心部を突破する。3ピッチ目(50m)はニードル先端部までの高度感のあるラインで、登っていて非常に気持ちが良い。ニードル先端部の終了点に到着し、左側から懸垂で下降し終了する(10:30)。注意点としては、3ピッチ目は長いため、距離を測って適切にカムを決めて欲しい(羽賀・今岡組は前半でカムを使い果たし後半カムが無くなった)。また、個人的な感想であるが、10月25日に登ったクラックルートとして有名な錫杖岳前衛壁「注文の多い料理店」より、ニードル左岩稜の方が高度感もあり、技術的にも難しいと感じた。

6 最後に
 噂どおり比叡山は、静かで、スケールが大きく、面白い岩場であった。羽賀さん、今岡さん、清家さんの短期間でのクライミングの上達には目を見張るものがあり、今後の活躍を大いに期待したい。しかし、私(入道)は、夏合宿(屏風岩・雲稜ルート)の反省でも述べたとおり、最新登山技術の習得、ゲレンデ(不動岩、烏帽子岩、保塁岩等)やクライミングジムでの練習等に励んで来たつもりであったが、まだまだ、不十分であった。次回の宮崎・比叡山のクライミングに備え、日々のトレーニングを大切にして行きたい。

文章/入道