2009年10月24日ー25日 錫杖岳前衛壁 左方カンテ、注文の多い料理店
メンバー/辰己L、入道SL、羽賀、今岡



 10/23夜大阪発。途中、高速の出口を間違えたり、ガソリンが無くなったりと、アクシデントに会いつつも、24日4時頃、道の駅奥飛騨温泉郷上宝に到着。ここで2時間程仮眠を取った後、中尾高原口の駐車場へ。ここからテント場迄は2時間位。テントを設営しテント場を出発したのが9:43。左方カンテに取り付いたのが10:30頃。 辰巳Lと羽賀、入道SLと今岡でザイルを結ぶ。左方カンテは両パーティ共つるべで登ることにする。じゃんけんの結果、辰巳L、羽賀パーティが先行。今回は残置無視のナチュプロで登ろうという事なので、カムを多めに持ってきている。(グレードはチャレンジアルパインの北アルプス編による)
 1P、辰巳Lトップ。V級の岩溝を難なく登っていく。
 2P、羽賀トップ。W級 カムを使うのが前回の名張以来の2回目なので、未だカムで墜落して止まった経験がない。なのでここに一抹の不安を抱きながら、細かくカムを決めながら登る。無事回収もされているので、今のところ問題ない様だ。  3P、辰巳Lトップ。X+級 フェースを右上、傾斜も強くなり見晴らしも良くなる。つまり露出+高度感がある。ここで先行パーティに順番を譲って貰う。辰巳Lがトップでスイスイ登って行くのを見て、「上手な方ですね」と。辰巳Lは怖さを感じないのだろうか。後で、頂上で聞いたところによると、「外岩のゲレンデで5.11を登れていても、初めの頃は本チャンのW級が怖かった」との事。怖さの大部分は経験+クライミングレベルのアップで克服できると信じよう。
 4P、羽賀トップ W級 チムニーを背中の大きなザックを邪魔だなーと思いながら登る。
 5P、辰巳Lトップ X級 左のフェースを細かいカムを所々決めながら登っていく。
 6P、羽賀トップ W+級 ここが私にとって苦い思い出のピッチになる。出だしの垂壁、少し考えてナチュプロを諦め残置を2本使う。垂壁を越えチムニーの奥まで行き、左のフェースをクラック沿いに登る。カムが今一つしっくりきまらず、頼りなさそう。背後の壁が無くなり、体が露出する。最後のクラックを直上すれば終わりだが、3回程行ったり来たりと躊躇する。あと一歩踏み込めない原因は何だろうか?ビレイヤーの辰巳Lは、墜落した時はしっかりと止めてくれるに違いない。そこに不安はない。あるのは、下で決めたカムだ。2本程決めたはずだが、どちらも0.5、0.4辺りの小さめのカム。今一つ決まりも良くなかった感じがした。おまけに背後にあった壁。今でこそ背後に壁はないが、足元背中側に見える。ここで落ちればその壁の上に叩きつけられる、もしくは壁と壁の間に挟まる、等。悪い想像が駆け巡る。体が硬くなり、ますます登れなくなる。ふと左を見ると残置ピンが。最後はそこへ逃げ込む。しかし、逃げ込んだところで恐怖は去らず。一度捕らえられるとなかなか振り切れない。そこからカンテを乗り越える時も2度ほど躊躇する。クソーと思いながら、エイヤーとなんとか乗り越え息も絶え絶えビレイ点へ。大きな課題を突き付けられたピッチだった。
 7P、辰巳Lトップ W級 脆いフェースを少し登り、右上のクラックを上まで登る。13:30登攀終了。頂上では、槍ヶ岳から焼岳迄の山並みが薄く雪化粧をして、我々を迎えてくれた。入道SLお気に入りのドライマンゴーを食べながら、それぞれ思い思いに写真を撮る。やはり山はいいなぁ。帰りは明日の、注文の多い料理店の偵察をしながらの懸垂下降。ハングなんぞは、こんな所越えられるのか?という感じで、ますます不安になる。テント場に着いたのが17時頃。だいぶ暗くなっており、すぐに夕餉の準備に入る。今日の晩御飯は丼+各種スープ。今岡氏持参の道場六三郎スープは美味。辰巳Lはやはり飲ん兵衛だ。入道SLを除き、焼酎を少しずつ戴く。これでぐっすりと眠れるだろう。


   
 10/25(晴) 今回の山行のメイン、注文の多い料理店を登る。昨日の偵察では少しビビりが入っていたが(私だけ)、テント場で話をした横浜のクライマーの人の情報によれば「細かいスタンスをきっちり拾っていけばさほど難しくない」との事だったので、まあ何とかなるだろうと、7時にテント場を出発。8:40取付。今日は入道SL、今岡パーティがつるべで先に登り始める。今日は入道SL、今岡パーティが先行で8:40に登り始める。辰巳L、羽賀パーティは、1Pを羽賀、残りを辰巳Lがリードする事に決める。
 1P、羽賀トップ W級 草付のフェースを大岩のある大テラス迄右上。  2P、辰巳Lトップ X+級 クラック〜ランペを左上し、枯木テラスへ。  3P、辰巳Lトップ X+級 今日の核心部。ハング〜クラック〜ハング。出だしを右のボルトラダー(以前はあったのだろう。。)からハングに取り付く事も出来るが、入道SL、辰巳L、共に直接ハングを攻撃する。凹角に突っ込み、ハングに頭を押さえられた所でステミング、カムを2本決め、ジャミングを決めて少し右のスタンスへ。そこからレイバックでハングを越えていく。2人ともノーテンでクリアー。流石です。フォローは今岡と羽賀。今岡氏はどうやらレイバックが苦手らしい。出だしのハングで1テン。その上のハングでも1テン。今岡氏の弱点を見つけた入道SLはなんだか嬉しそう。入道SLはこのピッチをほとんどレイバックで登ったらしい。今後、クラックルートを登る時はリード今岡氏、ビレイはもちろん入道SL。ニコニコ笑顔の入道SLが「ガンバ!ガンバ!」と下から檄を飛ばす絵が想像できるのでなんだか面白い。
 4P、辰巳Lトップ X+級 クラックから草付フェースを登る。上部の草付が少し嫌だが、傾斜も少し緩くなっているので、特に問題はなし。3P目を25mで切らずその上の20mも一緒に登ったので、この4Pが最終ピッチとなる。11:30登攀終了。昨日頂上まで登ったので、今日はここから懸垂下降をする。今回の山行に当たり、入道SLは「美しいラインを登りましょう」と口癖のように何度も言われていた。注文の多い料理店も、その美しいラインの一つになるらしい。実際に登ってみて、なんとなくではあるが、それを感じ取れたと思う。いいラインだなぁと、登っていて楽しいラインだなぁと思えた。帰りは平湯温泉で汗を流し、少し土産も買って帰路に就く。
 今回の錫丈岳では、皆、怪我もなく無事下山できました。天候が心配だったが二日間とも晴天に恵まれ充実した山行が出来ました。共に登った、辰巳L、入道SL、今岡氏に感謝したい。ありがとうございました。また美しいラインを登りに行きましょう。
文章/羽賀