2010年1月16-17日(曇) 御在所岳 アイスクライミング
メンバー/岡崎ソロ

家畜のロバと野生のロバが会いました、家畜のロバは重い荷物を背負っていました。
野生のロバが家畜のロバに尋ねます。「そんな荷物を背負って重くはないの?」
家畜のロバが答えます。
「重い」って何さ?
なにが言いたいかっていうと、つまりソロクライミングはすごく楽しいってこと!!

<1日目>
9:00 早朝に大阪を出発し、予定通り湯ノ山温泉を出発。
雪山ハイキング仕様のおじさん&おばさんと前後しつつ藤内小屋へと向かう。
三交湯の山温泉バス停から鈴鹿スカイラインまでの裏道ルートは崩壊した橋が修復され、通れるようになっていた。
10:00 藤内小屋に到着。
今日は犬のタローがいないので少し寂しく、休憩もそこそこに幕営地に向かう。
11:00 テント設営、幕営準備完了。
今日の寝床を確保して、いざ、ソロアイスクライミングへ・・・・・・
しかし、その、なんだ、アイスクライミング3回目にしてソロってどうなんだろう?
まあ、生まれてはじめてのマルチピッチがソロっていう以前のキ○ガイぶりに比べたら、アルデに入会して多少緩和されたというか・・・・でも、やっぱりちょっと脳に障害があるんじゃないかとか・・・・
※よいこのみんなはぜったいまねしちゃダメだぞ。
気を取り直してαルンゼに向かうが、途中ショートカットしようとして余計に時間を食ってしまった。御在所のような積雪が中途半端なところは1m以上の大きな岩がゴロゴロしている上に雪が積もって天然の落とし穴状態、トレースの無いところを歩く楽しさよりもはるかにウザさが勝る。
12:00 αルンゼ取り付きに到着。
すでに先行パーティーが取り付いている。さらに先に1パーティーいるようだが、こちらは時間の掛かるソロシステム。後ろに付かれるよりは気楽だ。
1P目
ザイルを出すのがめんどくさいので、フリーソロで登る。傾斜も緩いので楽勝かと思ったが、先行パーティーの落氷がバンバン降ってくる。いくつかはヘルメットに直撃。こちらから先行パーティーは見えないし、ラクのコールも無いのでよく分からないが、適当にやり過ごす。しかし、フリーソロしてるときに落氷に直撃されるのはなかなかスリリングだ。
2P目 先行パーティーに追いつく。先行パーティーの方に先に行ってもいいよといわれるが、1P目の反省も踏まえザイルを出すので、そのまま先行してもらう。聞くところによると京都のパーティーだそうだ。・・・・しかし、よく考えれば、「アイスクライミングにおけるソロシステムの研究」を名目に会に計画書を提出したんだった。忘れてた・・・ザイル使わないとソロシステムの研究になんないじゃん・・・
適当にブッシュにアンカーを取ってソロシステムを構築。いつもながら、登り返しが面倒だ。ソロシステム研究の結果、ソロは登ってる途中にザイルの操作が多いのでバイルは左右共にリーシュレスじゃないとダメだということが分かった。
3P目
傾斜が少し急になるが、短いので、えッもう終わり?って感じだ。ちょっと消化不良だったので、登り返しはなるだけ難しいラインをユーマルに頼らずに登ってみた・・・・落っこちた・・・・ムカついたので再挑戦した・・・・何とかなった・・・・ふうっ
14:00 前尾根のP1の上のほうに出た。なかなか見晴らしがよく気持ちがいい。
先行パーティーは裏道の本線の方に行ったようだ。山頂によって帰るのか、上から3ルンゼに下りて遊ぶのか分からないが、踏み跡のあるほうに行くのも芸が無い。P2・P3のコルから藤内沢のほうに降りれたと思うので、そこから降りることにする。

まあ、踏み跡も無い中、適当かついい加減に下降するので、色々と苦労したり、ミニ雪崩を発生させたりしながら降りる。
14:40 2ルンゼ取り付き
氷が薄すぎて登れる感じがしないので、あきらめる。今日は1ルンゼの偵察をしてテントに戻ることにする。
1ルンゼはまだ誰も入っていないのか、踏み跡もまったく無い。雪面が急で新雪が多いので胸ラッセルで進んでいく。所々出てくる氷はダブルアックスで処理。一壁の下まで来たところで疲れたので引き返すことにする。夏は鼻歌交じりでアプローチするところだが、雪が付くとなかなか大変だ。といっても、雪があるのでルンゼを直接つめて夏の巻き道より大分ショートカットできるのだが。
16:00 藤内沢出合。
さっさと幕営地で装備をはずし、藤内小屋へビールを買いに行く。今日はじゃれついてくるタローがいないので寂しい。

テントで干し貝紐をかじり、ビールを飲みながら、今日の自分の行動を回想したのだが・・・・・自由すぎるだろ、常識的に考えて・・・・ザイルだすのがめんどいからフリーソロとか、疲れたからここでおしまいとか、踏み跡無いほうが楽しそうだからそっち行こうとか。・・・・・・いや〜〜〜楽しかった。

<2日目>
4:00 ドキドキしながら目が覚める。今日は中又に挑戦するつもりだ。ゆっくり朝食を取って準備する。朝食は今岡君が宮崎のお土産で買ってきてくれた九州の棒ラーメン「風神」。
6:00 空も少し白んできた中、準備万端出発する。
昨日トレースをつけたラインを登っていく。昨日のトレースは少し埋っているが問題ない。一壁の下を通ってバットレスの下へ出る。
7:00 中又取り付き
やはり、氷は下まで届いていない。最下部がブランクセクションになっている。夏のカルフォルニアドリーミングの左側の凹角を上がる。何とかなるだろうと、フリーソロで取り付くが、途中ミックスな感じでいやらしく、なかなか緊張する部分もあった。
大き目のテラスでペツルが打ってあるので、ここでアンカーを取ってザイルを出す。
セルフビレイを取って下を眺めると、今まさに夜が明けて、谷が深紅に染まっている。この絶句する光景を長めているのは今、私だけ。たった一人だけ。く〜〜〜最高!!

怪しげなベルクラを乗越えて、1ピン目は残置ハーケン、ほとんど氷の付いていないチムニーを奮闘的に越えて、一段上がる。夏はこのチムニーでびしょ濡れになったことを思いだす。
一段上がって上を見上げると、段差のまったく無い一枚の氷が続いている。たぶん今さわっているこの氷が中又の核心、廣川さんが「チャレンジ・アイスクライミング」でX+位あると書いていた氷だ。しかし、まだまだ薄く、スクリューが5cmしか入らない。

ヤベーどうしよう、かなり無理っぽい。しかも残置も見当たらないから帰れない・・・・
え〜〜〜い、行っちまえ!!
5cmしか入っていないスクリューにタイオフしてザイルをかける。2〜3歩上がって、すぐさまスクリューを取り出すが、ここはその5cmすら入らない。奮闘しているうちにパンプする。
で、マジ落ち。下のテラスにケツから落っこちる「オーッイェッ!!」
日本人がケツを打つと急に英語になるの法則は研究の価値があると思う。
そして、ちょっと脳に障害がある可哀相なジョーさんは無謀にも再挑戦、さっきよりさらに高いところからマジ落ち。「アウチ!!オゥ、フーイェッ!!」
日本人がケツを打つと急に英語になるの法則は研究の価値があると思う(大事なことなので2回言いました)。
そして、バイルは明後日の方向にすっ飛んでいき、手に持っていたスクリュー(\6,090)はお星様になりました。

さて、いかに脳に障害があっても、そろそろあきらめて敗退しなければならないことはわかる。しかし、残置はない。スクリュー(\6,090)を残置するのはお財布的にとても無理。そもそも、5cmしか入っていないスクリューに人生を預けたくない。仕方ないので、深さ5cmのVスレッドを3つ作った。ほんとは4つ作ったのだが、うち一つは作ってる最中に小さすぎて割れた・・・・・ホンマに大丈夫なんかいな・・・・・・長めのロープスリングで流動分散して懸垂下降、極力加重をかけないように、片手にバイルを持ってクライムダウン気味に下降する。一瞬足が滑って全体重が支点にかかって焦るが、何とか持ちこたえてくれたようだ。なんとか、まともそうな残置支点までおりて、ほっと一息。あとはまともな支点を使って懸垂下降。
もう少し私に力と技術と洒落になってないお値段のハンガーとトリガーのついたリーシュレスのバイルがあればな〜〜〜

9:00 中又取り付きまで戻ってきた。
敗退まで1P目で2時間も奮闘していたわけだ。精根尽き果てた感じだったが、敗退した割には妙に充実感があって、なかなか楽しかった。後日、梅田のロッジで、「スタッフの人に中又氷結してるって聞いたから行ったのに、スクリュー5cmしか入らなくてダメでしたよ〜〜」って言ったら、店員さんに「楽しそうだね〜〜」って返された。きっとすごく楽しそうに話していたに違いない。
色々と燃え尽きたので帰ろうかとも思ったが、時間も早すぎるので3ルンゼで1本登ってから帰ることにする。途中で単独で藤内沢を遡行する方に出会う。裏道から分かれて藤内沢を遡行して山頂に向かう人も少数だがいるようだ。その方の曰く、「いや〜ソロでアイスクライミングとは凄いですな〜〜、私なんか雪山ハイキングが精一杯ですよ(笑)」・・・・・いや、ピッケル1本とサブバイル1本持って冬の藤内沢を単独で毎週のように遡行してる時点で雪山ハイキングから大きく逸脱している気がするんだが気のせいか?
10:00 燃え尽き症候群で休み休み登って、やっと3ルンゼ到着。
先行パーティーがトップロープで遊ぶようなので、端っこの方で1本登る。
11:00 3ルンゼから撤収。
降りていく途中でたくさんのパーティーとすれちがう。
12:00 藤内沢出合
なんと、ここでびっくりする人と再会。以前六甲の堡塁岩でよくあったガイドのムキムキお兄さんとばったり出会う。お互いにびっくり、まさかここで会うことのなるとは思わなかった。しかも、私が一人だったものだから、余計に一人で頑張ってるね〜〜とばかりに久闊を叙した。今日もムキムキお兄さんはガイドのお仕事のようで、男女1名づつ連れていた。
13:00 テント撤収完了
14:00 バス停到着
・・・・・・1時間くらいバスが無い。ちなみに近鉄湯の山温泉駅までは歩いて1時間弱。早くお風呂に入りたいので歩くことにする。2/3ほど歩いたところで、前に黄色い車が止まる。????と思っていると中からムキムキお兄さんが出てきて、駅まで乗っけていってくれるとのこと。ありがたく甘えさせてもらう。
なにはともあれ、いつもの片岡温泉の源泉かけ流しの温泉で汗を流し、贅沢な〆とした。

文章/岡崎